大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)1371号 判決 1991年5月27日
原告 光洋機械産業株式会社
被告 株式会社北川鉄工所 外四名
主文
一 被告株式会社北川鉄工所は、別紙第一ないし第四物件目録記載の物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告株式会社北川鉄工所は、原告に対し、金九四三八万三八六六円及びこれに対する昭和五八年三月五日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告有限会社水戸コンクリート商事は、別紙第三物件目録記載の物件を使用してはならない。
四 被告有限会社水戸コンクリート商事は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
五 被告有限会社水戸コンクリート商事は、原告に対し、金五一万円及びこれに対する昭和五八年三月八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、別紙第一物件目録記載の物件を使用してはならない。
七 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
八 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、原告に対し、金二四万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五八年三月五日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
九 被告二日市生コン株式会社は、別紙第三物件目録記載の物件を使用してはならない。
一〇 被告二日市生コン株式会社は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
一一 被告二日市生コン株式会社は、原告に対し、金四六万五〇〇〇円及びこれに対する昭和五八年三月七日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
一二 原告の被告株式会社北川鉄工所、被告有限会社水戸コンクリート商事、被告田子浦第一生コンクリート株式会社及び被告二日市生コン株式会社に対するその余の請求並びに被告東亜生コンクリート株式会社に対する請求を棄却する。
一三 訴訟費用は、原告に生じた費用の三分の二と被告株式会社北川鉄工所に生じた費用の三分の二を同被告の、原告に生じた費用の一〇〇分の一と被告有限会社水戸コンクリート商事に生じた費用の一〇分の九を同被告の、原告に生じた費用の一〇〇分の一と被告田子浦第一生コンクリート株式会社に生じた費用の一〇分の九を同被告の、原告に生じた費用の一〇〇分の一と被告二日市生コン株式会社に生じた費用の一〇分の九を同被告の各負担とし、原告及び右四名の被告らに生じたその余の費用と被告東亜生コンクリート株式会社に生じた費用を原告の負担とする。
一四 この判決は、一、二、五、八及び一一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告株式会社北川鉄工所は、別紙第一ないし第五物件目録記載の物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告株式会社北川鉄工所は、その所有する前項記載の各物件及びその半製品(前項記載の各物件の構造を具備しているが、いまだ製品として完成に至らないもの)を廃棄せよ。
三 被告株式会社北川鉄工所は、原告に対し、金一億四二五九万円及びこれに対する昭和五八年三月五日(訴状送達の日)から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告株式会社北川鉄工所は、別紙広告目録記載の新聞に同目録記載の要件の広告を掲載せよ。
五 被告有限会社水戸コンクリート商事は、別紙第三物件目録記載の物件を使用してはならない。
六 被告有限会社水戸コンクリート商事は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
七 被告有限会社水戸コンクリート商事は、原告に対し、金六八万円及びこれに対する昭和五八年三月八日(訴状送達の日)から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
八 被告東亜生コンクリート株式会社は、別紙第五物件目録記載の物件を使用してはならない。
九 被告東亜生コンクリート株式会社は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
一〇 被告東亜生コンクリート株式会社は、原告に対し、金七〇万円及びこれに対する昭和五八年三月七日(訴状送達の日)から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
一一 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、別紙第一物件目録記載の物件を使用してはならない。
一二 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
一三 被告田子浦第一生コンクリート株式会社は、原告に対し、金三二万八〇〇〇円及びこれに対する昭和五八年三月五日(訴状送達の日)から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
一四 被告二日市生コン株式会社は、別紙第三物件目録記載の物件を使用してはならない。
一五 被告二日市生コン株式会社は、その所有する前項記載の物件を廃棄せよ。
一六 被告二日市生コン株式会社は、原告に対し、金六二万円及びこれに対する昭和五八年三月七日(訴状送達の日)から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
一七 訴訟費用は被告らの負担とする。
一八 仮執行宣言
第二事案の概要
本件は、二軸強制混合機に関する特許権の専用実施権者が、その専用実施権等の侵害を理由として、二軸強制混合機を製造販売する被告株式会社北川鉄工所に対しその製造・販売等の禁止、損害賠償等を求めるとともに、それを購入して使用するその余の被告四社に対しその使用禁止、損害賠償等を請求する事案である。
一 原告の有する専用実施権(1、2、4は争いがない。)
1 ベーハーエス・バイエリッシュ・ベルク・ヒュッテン・ウント・ザルツヴェルケ・アクチェンゲゼルシャフト(以下「ベーハーエス」という。)は、ドイツ連邦共和国法に基づき設立された法人であり、日本において次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許請求の範囲第一項記載の特許発明を「本件発明」という。)を有している。
特許番号 第一〇八八七六三号
発明の名称 二軸強制混合機
発明の数 四
出願日 昭和四七年六月七日(特願昭四七-五八四九四)
優先権主張 一九七一年八月二〇日西ドイツ(DE)P二一四一九〇八九
出願公告日 昭和五四年一一月一四日(特公昭五四-三七三三五)
設定登録日 昭和五七年三月二三日
2 本件発明の特許出願願書に添付した明細書(特許法六四条による補正後のもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲第一項の記載は、次のとおりである。
「特にコンクリート・ビチューメン混合物および石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、混合槽を備え、該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機において、混合槽1は自己支持構造であり、駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられていることを特徴とする二軸強制混合機。」
3 原告は、昭和四七年一〇月一八日にベーハーエスとの間でライセンス及びノウハウ契約(以下「本件実施契約」という。)を締結し、同契約は昭和五六年四月一日更新されたが、同契約の趣旨は、ベーハーエスが原告に対し、本件発明につき日本等における完全独占的実施権を付与するというものである(甲四、甲五、弁論の全趣旨)。原告は、同契約に基づき、日本において本件発明に係る二軸強制混合機を独占的に製造販売してきた(争いがない。)。
4 ベーハーエスは、本件特許権につき、原告に対し次のとおり専用実施権(以下「本件専用実施権」という。)を設定し、登録手続を了した。
設定日 昭和五七年五月一〇日
登録日 昭和五七年一二月二四日
範囲 地域 日本国
期間 本件特許権存続期間満了まで
内容 全部
二 本件発明の構成要件及び作用効果
1 本件発明は、次の構成要件からなるものである(甲二、甲三。但し、構成要件B及びCの具体的意義については争いがあり、当事者の主張及び当裁判所の判断は後述)。
A 特にコンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a 混合槽を備え、
b 該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c 減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、
d 該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、
e 該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する、
二軸強制混合機であること。
B 混合槽1は自己支持構造であること。
C 駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられていること。
D 混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されていること。
E ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられていること。
2 本件発明の目的及び作用効果は次のとおりである(争いがない。)
(一) 本件発明は、コンクリート、ビチューメン混合物、石灰砂岩等の混合用に使用される二軸強制混合機の改良に関するものである。
従来の二軸強制混合機においては、例えば、二個の混合軸は連結ホイールによりシンクロナイズされ、この連結ホイールは混合機の基礎とは別の所に設けた基礎上に据付けられた別個の駆動装置によって駆動されるものであり、このような従来の駆動方法においては大きい空間を要すること及び騒音が高く、また保守が困難であることの他不経済であるという欠点があった。
本件発明の目的は、自己支持形でかつ一体形というコンパクトな構造によって、費用及び空間を節約し、保守の容易なより新しく簡単な、かつ総合的見地からより経済的な二軸強制混合機を実現することにある。即ち、混合槽は自己支持構造であり、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取付けられ、混合槽に自己支持されて一体形を成すことにより前記の欠点を解消することが可能となる。
(二) 更に、本件特許発明に係る二軸強制混合機は、混合すべき物質を上方より挿入する混合機であって、混合すべき物質は混合槽中に水平で、かつ互いに反対方向に回転する混合具により垂直及び水平方向に混合され、螺旋状に動かされる。この作業過程により短時間で優れた均等性が得られる。また、混合物の取出しはローラ状の排出用滑り弁を介して重力によって行われるため、取出しの際に分離現象が起こらないなどの作用効果がある。
三 被告らの行為(争いがない。)
1 被告株式会社北川鉄工所(以下「被告北川鉄工所」という。)は、本件特許出願公告(昭和五四年一一月一四日)後昭和五八年二月ころまでの間、別紙第一物件目録記載の物件(以下「イ号物件」という。)、別紙第二物件目録記載の物件(以下「ロ号物件」という。)、別紙第三物件目録記載の物件(以下「ハ号物件」という。)、別紙第四物件目録記載の物件(以下「ニ号物件」という。)及び別紙第五物件目録記載の物件(以下「ト号物件」という。)を業として製造し、いずれも「ダブルミキサー」の名称で業として販売し、及び販売のために展示した。
2 被告有限会社水戸コンクリート商事(以下「被告水戸コンクリート商事」という。)は、被告北川鉄工所からハ号物件を購入し、昭和五四年一二月ころから、業として使用している。
3 被告東亜生コンクリート株式会社(以下「被告東亜生コンクリート」という。)は、被告北川鉄工所からト号物件を購入し、昭和五七年五月ころから、業として使用している。
4 被告田子浦第一生コンクリート株式会社(以下「被告田子浦第一生コンクリート」という。)は、被告北川鉄工所からイ号物件を購入し、昭和五五年八月ころから、業として使用している。
5 被告二日市生コン株式会社(以下「被告二日市生コン」という。)は、被告北川鉄工所からハ号物件を購入し、昭和五五年九月ころから、業として使用している。
四 被告各物件の構成
1 イ号物件は次の構成を有する(A1、D1、E1については争いがない。B1、C1は、争いがない第一物件目録の記載及び弁論の全趣旨により認定)。
A1 コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a1 混合槽を備え、
b1 該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と二台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c1 減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、
d1 該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、
e1 該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する
二軸強制混合機である。
B1 混合槽1は、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びその排出用滑り弁のいずれをも担持している。
C1 駆動装置の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられており、減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52は連結ロッド53、54及びフォークエンド56を介して、混合槽1に設けられたブラケット58に溶接固定されたターンバックル(固定ブラケット)55にそれぞれ連結されている。
D1 混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されている。
E1 ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取りつけられている。
2 ロ号物件は次の構成を有する(A2、D2、E2については争いがない。B2、C2は、争いがない第二物件目録の記載及び弁論の全趣旨により認定)。
A2 コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a2 混合槽を備え、
b2 該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と二台の駆動モータにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c2 減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、
d2 該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、
e2 該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する
二軸強制混合機である。
B2 混合槽1は、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びその排出用滑り弁のいずれをも担持している。
C2 駆動装置の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられており、減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52はフォークエンド付ボルト57を介して、混合槽1に設けられたブラケット53、54にそれぞれ連結されている。
D2 混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されている。
E2 ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取りつけられている。
3 ハ号物件は次の構成を有する(A3、D3、E3については争いがない。B3、C3は、争いがない第三物件目録の記載及び弁論の全趣旨により認定)。
A3 コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a3 混合槽を備え、
b3 該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と二台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c3 減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、
d3 該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、
e3 該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する
二軸強制混合機である。
B3 混合槽1は、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びその排出用滑り弁のいずれをも担持している。
C3 駆動装置の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられており、減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52はフォークエンド付ボルト57を介して、混合槽1に設けられたブラケット53、54にそれぞれ連結されている。
D3 混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されている。
E3 ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取りつけられている。
4 ニ号物件は次の構成を有する(A4、D4、E4については争いがない。B4、C4は、争いがない第四物件目録の記載及び弁論の全趣旨により認定)。
A4 コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a4 混合槽を備え、
b4 該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と二台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c4 減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、
d4 該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、
e4 該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する
二軸強制混合機である。
B4 混合槽1は、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びその排出用滑り弁のいずれをも担持している。
C4 駆動装置の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられており、混合槽1の支脚部に設けられたブラケット51に設けられた減速機固定ブラケット52にそれぞれボルトを介して取り付けられている。☆誤☆
D4 混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されている。
E4 ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁36、37及びベアリング47を介して承台38に取りつけられている。
5 ト号物件は、次の構成を有する(争いがない第五物件目録の記載及び弁論の全趣旨により認定)。
A5 コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、
a5 混合槽を備え、
b5 該混合槽1中に設けた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、減速機9・10と二台の駆動モータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、
c5 減速機9・10の入力軸と駆動モータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、
d5 該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、
e5 該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁35を有する
二軸強制混合機である。
B5 混合槽1は、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びその排出用滑り弁のいずれをも担持している。
C5 駆動装置の減速機9、10は減速機取付フランジ62を介して混合槽1に取付けられるとともに、軸受3及び該減速機の中空出力軸の軸受を介して混合槽1に保持された混合軸31に差し込み式に設けられている。
D5 混合軸31は、減速機が取付られていない端部側では、潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽に保持されており、減速機取付側では、混合槽にフランジで固着された減速機9・10の中空出力軸の軸受に嵌合されることによって、混合槽1に保持されている。
E5 ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取りつけられている。
6 イ号ないしニ号物件は本件発明の構成要件A、D及びEを、ト号物件は同A及びEを具備している(争いがない。)。
五 本件の主な争点は次のとおりである。
1 本件発明の構成要件B「混合槽1は自己支持構造であること」の意味
2 本件発明の構成要件C「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられていること」の意味
3 被告各物件が右構成要件B及びC(ト号物件についてはB、C及びD)を具備するか否か。
4 被告各物件が本件発明の技術的範囲に属する場合、被告らが原告に対して支払わなければならない損害賠償ないし不当利得の金額
第三争点に関する当事者の主張
一 原告の主張
1 争点1(構成要件B「混合槽1は自己支持構造であること」の意味)について
(一) 「混合槽1は自己支持構造である」とは、(1) 混合槽がその基礎架台上に固定して据え付けられ、自立していること(混合槽の自立性)、及び(2) その混合槽が、二軸強制混合機の基礎構成部材として、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれをも担持している構造であることを意味する。
そのように解すべきことは、本件明細書の発明の詳細な説明中の記載、特に、「即ち、混合槽は自己支持構造であり、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取付けられて一体形を成すことにより前述の欠点を解消することができる。」(公報三欄一六ないし二〇行目)、「第1図、第2図および第3図に示すように混合槽1は溶接構造で作られ、混合具2、混合槽31、軸承3、駆動装置5(4、9乃至12)、エアシリンダ6及びローラ状の排出用滑り弁35が混合槽1に取り付けられており、かつ混合槽1は完全自己支持構造として独立懸架されている。」(公報三欄二三ないし二八行目)との記載及び各図面に鑑み明らかである。
従って、その概念には、被告ら主張の駆動装置に関する反力系のリンク状釣合機構の構成等を含まないことは明らかであり、本件発明は、その実施に当たり必要不可欠な軸上減速機の反力の支持手段については、軸上減速機と一体のものとして当業者にとって自明であった公知の手段に委ね、これを特に限定していないのである。
(二) 被告ら主張について
(1) 公知技術との関係
実用新案出願公告公報昭和三六年二九九七五号(乙二)記載の混合機においては、二本の混合軸を互いに反対方向に駆動する際の同期の手段は、二個の正歯車で構成するいわゆるタイミングギヤを用いている。このようなタイミングギヤを用いた混合機では、二本の混合軸のいずれか一方にのみ減速機を含む一個の駆動装置が設けられるか、あるいは、それが別個の基礎に据え付けられた架台上に設けられたうえ連結される(乙二記載の混合機も、減速ギヤ及びモータは別個の据え付けフレームに据えつけられている)のが原則となっており、このような方式が従来の二軸強制混合機の駆動装置の基本構成であった。
乙第二号証には、二軸強制混合機の混合槽、混合軸、混合具、排出弁が記載され、「CAVEX」カタログ(乙七)には、入力軸と出力中空軸とが直角に配置されたモータ付軸上減速機が開示されており、回転軸の同期手段としての弾性カップリング等の技術が出願時に公知技術として存在していたが、右は単に個々の公知技術が別々に存在したというだけのことであり、これらを有機的、一体的に結合した本件発明のような二軸強制混合機に想到することが容易であったことを示すものではない。このことは、例えば、乙第二号証においては、駆動装置に関する記載がなく、本件発明と同様の駆動装置あるいは軸上減速機の構成ないしは使用を示唆する記載も全く見当たらないことや、乙第七号証においては、二個の軸上減速機を対称的に使用し且つそれぞれの入力軸を何らかの同期手段によって同期回転させることにより二本の被動軸を同期回転させるようにした本件発明と同様の技術について示唆する記載が全くないことに照らして明らかである。
特許出願公告公報昭和四五年三五九五四号(乙三一)記載の材料調制装置は、鋳造作業に使用する鋳型用砂粒等のような材料を調制する装置に関するものであって、しかも竪型の皿型ミキサーを表したものであり、本件発明にかかる水平型の二軸強制混合機とはその構造も機能も全く異なったものであるうえ、そこに記載された径違歯車も軸上減速機を表したものではないから、二台の軸上減速機の入力軸を同期回転させることによって二本の出力軸を同期回転させる技術に関する公知例とはいえない。
結局、乙第二号証記載の混合機と「CAVEX」軸上減速機CUHA型(乙七の1・4図)を単純に寄せ集めても本件発明は成立せず、本件発明は、従前の二軸強制混合機において混合槽の基礎とは別個の基礎に据え付けられた架台上に設けられていた駆動装置を、軸上減速機を用いて直接混合軸に取り付けるという新規な発想に基づき、その実現のためのいくつかの課題(混合軸の同期駆動もその一例である)の解決手段を創作したことに新規性及び進歩性が存する。
また、西ドイツ公告公報一〇五八一八八(乙三)は、構成要件Aのbcdeいずれの要素も備えていない混合機に関するものであり、かつCDEの構成要件も備えていないから、本件発明における「混合槽の自己支持構造」に関する先行技術とはいい難い。また、乙第三号証の駆動装置は、軽量モータのみからなり、減速機を備えていないのに対して、本件発明における駆動装置とは、モータのみならずウォーム歯車減速機を含む駆動装置全体を指すものであるから、両者は全く異なった技術思想に基づくものである。したがって、乙第二号証と乙第三号証をただ寄せ集めても、やはり本件発明に想到し得るものではない。
(2) 特許異議答弁書中の記載
本件特許出願は、特許法三八条ただし書(昭和六二年法律第二七号による改正前)の規定による併合出願であり、本件特許権は、本件発明のほか、特許請求の範囲第二項ないし第四項に記載された合計四件の発明からなる。そして、本件特許出願人が、特許異議答弁書で述べた「反力系のリンク状釣合機構」については、同答弁書中の、その具体的意義を記載した、「第1図において、ウォーム入力軸1に九〇度にトルク支持板2が取付けられており、これらが駆動軸3に摺動的に嵌め込まれている。さらに、トルク支持板の上部にはそれぞれ電動機5が位置調整自在に取付けられ、そして相対向するトルク支持板2の二点4で、リンク状に連結されている。又ウオーム入力軸1は弾性カップリング6で結合されている。このようにすることによって、駆動される軸3を原軸としてほぼ三次元的釣合機構が構成され、軸3の反力は打消され、支点7によって簡単に駆動装置が混合槽に一体化され、又、混合作業中の激しい衝撃に充分耐え、振動のない二軸強制混合機を可能としている。」(乙四の一、八頁六ないし二〇行目)との記載から明らかなように、右の「ウォーム入力軸1に九〇度にトルク支持板2が取付けられており、これらが駆動軸3に摺動的に嵌め込まれている。さらに、トルク支持板の上部にはそれぞれ電動機5が位置調整自在に取付けられ、そして相対向するトルク支持板2の二点4で、リンク状に連結されている。又ウォーム入力軸1は弾性カップリング6で結合されている。」との具体的、機械的構成を機械力学的にかつ包括的に「反力系のリンク状釣合機構」と評言したにすぎない。右構成中には、明らかに特許請求の範囲第一項記載の発明である本件発明の構成要件には含まれない構成要素(例えば、トルク支持板の上部にはそれぞれ電動機5が位置調整自在に取付けられること、相対向するトルク支持板2の二点4でリンク状に連結されること、ウォーム入力軸1は弾性カップリング6で結合されること)が含まれており、その構成は、用語に多少の違いはあるが、具体的な機械的構成としてみれば、特許請求の範囲第四項記載の発明の構成要件の部分を成すものと一致している。
従って、本件特許出願人が特許異議答弁書において前記の構成を「反力系のリンク状釣合機構」と評して説明したのは、特許請求の範囲第一項記載の発明である本件特許発明についてではなく、同第四項記載の発明に関してなしたものであり、従って、被告が指摘する特許異議答弁書中の反力相殺機構に関する各記述は、その記載の趣旨からしても、いずれも特許請求の範囲第四項記載の発明における合理的な反力釣合機構に関する構成乃至作用効果に関して論じたものと解すべきことは明らかである。同答弁書中の被告ら指摘の記載から、本件特許出願人が本件発明の技術的範囲を実施例に限定する意思を有していた、あるいは表明したと解することはできない。本件特許出願人は、異議申立人が引用した先行技術と本件発明との違い、すなわち、「減速機の入力軸と駆動モータの軸とを混合軸に対して直角に配置した二軸強制混合機において、混合槽を自己支持構造とするとともに、駆動装置の減速機を混合槽に軸承された混合軸に着脱自在に設けることにより、装置全体をよりコンパクトな構造にしたこと。」の新規性、進歩性を強調するために、本件発明の最良の実施例をもって説明したにすぎないのであり、特許異議答弁書中には、本件特許発明の技術的範囲を明細書に記載された実施例に限定する趣旨は窺い得ない。
仮に、被告ら主張の如く、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」を混合槽に直接取付ける点において、本件発明における「自己支持構造」が新規なものと認められ、特許査定がなされたものとすれば、「反力系のリンク状釣合機構」と形容される何らかの具体的、機械的手段が、当然に特許請求の範囲第一項に記載されていなければならないはずであるし、また、特許請求の範囲第一項の発明の他に、特許請求の範囲第二項ないし第四項の発明が存することは明らかな矛盾である。特許庁審査官が右の如く一見して矛盾とわかる誤りを冒すことは到底考えられない。
2 争点2(構成要件C「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられていること」の意味)について
(一) (着脱の容易性は問題外である)
「着脱自在に」とは、減速機9、10が、混合軸31に離脱不可能に固定されるものではなく、必要に応じ(主として保守の必要から)、混合軸に装着され、或いは混合軸から離脱されることを表現したものにすぎない。右の概念に着脱の容易性が含まれるものではないことは明らかである。排出用滑り弁は、保守の必要から着脱する必要性は、減速機に比べてその頻度ははるかに少なく、「着脱自在性」を強調する必要をみないのであるから、両者の特許請求の範囲の記載の違いから「着脱自在」の意義を定めることは理由がない。
本件特許出願人であるベーハーエスが、特許異議答弁書において、「歯車9・10はスリップ・オン・ギヤとして形成され、混合軸31に取りはずし可能なように取り付けられている。」(乙四の一、五頁一ないし三行目)と述べたが、「スリップ・オン」とは、単に「差込み式」であることを意味するものであり、「スリップ・オン・ギヤ」とは、差し込み式のウォーム歯車減速機であることを意味し、「着脱自在」の語は単に右の「差込み式」を示すために用いられたものである。
被告北川鉄工所も、ロ号物件を実施例として含む実用新案登録願(甲三三)において、「着脱自在」の語を単に減速機を混合軸にスリップオン式に設けることを表現する意味で、着脱の難易とは全くかかわりなく用いており、「着脱自在」の語は、当業者にとって差し込み式であることを意味するものである。
(二) (駆動装置の混合軸ないし混合槽への着脱とは無関係)
構成要件Cは、減速機が着脱自在に設けられることを構成要素とするものであり、駆動装置全体の着脱とは無関係である。すなわち、その字義からして、減速機9、10が混合軸31に対して着脱自在に設けられること、つまり、スリップ・オン・ギヤとして形成された減速機9、10が混合軸31に設けられることを意味するものであり、それ以上に駆動装置全体の混合槽への着脱等の問題がその構成要素として含まれていないことは、構成要件Cの文言上も、又出願経過からも明白である。
3 争点3(被告各物件が本件発明の構成要件B及びC(ト号物件についてはB、C及びD)を具備するか否か)について
(一) イ号物件
(1) イ号物件が、前述の意味における構成要件Bを充足することは明らかである。仮に、右の構成要件に、減速機の反力の支持手段(支持部材)もまた混合槽に直接取付けられて一体形を成すという意味が含まれているとしても、イ号物件の構造からは、下部連結部材を構成するフォークエンド56、連結ロッド53、54及びターンバックル55のうち、ターンバックル55が、混合槽1に設けたブラケット58に溶接固定され、これらによってイ号物件の減速機の反力支持の効果を奏していることは明らかであり、したがって、減速機の反力支持手段がその混合槽と一体形を成すことは明らかであるから、イ号物件は右の構成要件を充足する。
(2) イ号物件は、前述の意味での構成要件Cを充足している。仮に、構成要件Cの「着脱自在」の語句に着脱容易性の概念が含まれているとしても、イ号物件の着脱は、突起ブラケット51・52とフォークエンド56とを各連結しているピンの着脱により行い得るのであり、本来イ号物件において減速機自体ではなく、ターンバックル55のみを混合槽に溶接固定したのも、その保守の必要上減速機の着脱を当然に考慮したものであるから、本件発明とイ号物件とは、その「着脱容易性」には何ら差異がない。
(二) ロ号物件及びハ号物件
(1) ロ号物件及びハ号物件が、前述の意味における構成要件Bを充足することは明らかであり、被告の自由技術の抗弁は理由がない。
(2) ロ号物件及びハ号物件は、前述の意味での構成要件Cを充足している。仮に、構成要件Cの「着脱自在」の語句に着脱容易性の概念が含まれているとしても、本件発明とロ号物件及びハ号物件とは、その「着脱容易性」には何ら差異がない。
(三) ニ号物件
(1) ニ号物件が、前述の意味における構成要件Bを充足することは明らかである。
(2) ニ号物件は、前述の意味での構成要件Cを充足している。仮に、構成要件Cの「着脱自在」の語句に着脱容易性の概念が含まれているとしても、本件発明とニ号物件とは、その「着脱容易性」には何ら差異がない。
(3) なお、ニ号物件は、本件発明の構成要件を全て充足するが、その構造には、減速機にかかる反力を連結ロッドあるいはフランジによらずに、支持ブラケットという独自の手段によって支持しているという特徴がある。すなわち、ニ号物件は、二個のウォーム歯車減速機9、10は、混合槽1下部の支脚部の補強材から減速機の前方の突き出されたブラケット(取付金具)51の先端に、減速機固定ブラケット52をボルト止めし、右減速機固定ブラケット52は上部を半円形とし、この半円形の部分に減速機9、10のハウジングの外蓋の周辺に設けられた取付ボルト孔に適合するボルト孔を設け、右半円形の部分を減速機にボルトで固定することによって減速機にかかる反力を支持することを特徴としている。右の半円形部分を有する減速機固定ブラケット52は、混合軸31の自重の一部及び駆動装置5の減速機9、10の自重を支えている如く見受けられるが、混合軸31は混合槽1の正面側及び背面側の各槽壁に設けられた二個の軸受3、3によって混合槽1に支承されており、減速機固定ブラケット52に自重の一部でもかかることはない。そして、駆動装置5の減速機9、10の自重は、混合槽1の正面側槽壁の軸受3から駆動装置寄りに突出した混合軸31の突出部分によって支承されている。その結果、混合軸31の右突出部分には駆動装置5の自重によるたわみを生じるが、混合槽の正面側槽壁に設けられた軸受から駆動装置の減速機の中心線までの距離において混合軸31が駆動装置の全重量によって受けるたわみは、三四・五ミクロンという極めて微小なもので、このようなたわみ量が二軸強制混合機の回転アライメント(軸が直線上で転すること)を阻害する要因となることはありえず、駆動装置の重力を下方から支える技術的必要性は全くない。したがって、減速機固定ブラケット52は、駆動装置の重力を支える機能を果たしておらず、専ら減速機9、10に作用する反力を支持するためのものにすぎないことは明白である。
(四) ト号物件
(1) ト号物件が、前述の意味における構成要件Bを充足することは明らかである。
(2) (減速機の着脱自在について)
ト号物件の駆動装置の減速機9、10は、減速機取付フランジ62を介して混合槽1に取付けられるとともに、軸受3及び該減速機の中空出力軸の軸受を介して混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられている。しかし、構成要件Cの「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられる」とは、取り外しが可能なように、いわゆる軸上減速機(据付ベースが不要で、中空出力軸を被動機の軸に嵌め込んで直接これを駆動する減速機)を、その中空に形成された出力軸を利用して被動軸である混合軸に嵌め込む構造を表した用語であり、減速機を混合軸から離脱させるための手間等とは無関係な概念であり、かつ減速機の重力が直接混合槽に掛かるか、混合軸を介して間接的に混合槽に掛かるかとは無関係な概念である。そして、ト号物件においては、ウォーム歯車減速機は減速機取付フランジを介して混合槽に固着されてはいるものの、当該ウォーム歯車減速機が軸上減速機として二軸強制混合機の混合軸に嵌め込まれて直接これを駆動する構造となっている。しかもウォーム歯車減速機を減速機取付フランジに固着する手段及び減速機取付フランジを混合槽の支脚部に固着する手段はいずれもボルト・ナットであり、例えば溶接等のように固着の解除を前提としない手段と異なり、必要に応じて着脱を行うことを当然の前提とした手段にすぎない。したがって、ト号物件においても、混合槽に取り付けられる減速機の取り外しは可能であり、かつ、その中空出力軸を混合槽に嵌め込む構造であることからすれば、右構成要件を充足する。
(3) (構成要件C、Dに関する設計上の微差、均等、迂回)
本件発明の構成要件C、Dの混合軸31は、一応、混合槽1の正面側槽壁及び背面側槽壁のそれぞれに設けられた軸受3、3を介して混合槽1に保持される構造と解される。
これに対して、ト号物件においては、混合軸は混合槽の背面側槽壁に設けられた軸受と、減速機取付フランジを介して混合槽に固着されたウォーム歯車減速機の中空出力軸の前後両側に一般的に装着されている軸受とによって支承され、混合槽の正面側槽壁の軸受が省略された構造となっている。これは、ト号物件は、軸上減速機の二本の混合軸を直接駆動するに際して必要不可欠となる軸上減速機に加わる反力の支持方法として、フランジ接合の方法を採用した(軸上減速機をフランジ接合により被動機に固着して減速機にかかる反力を支持する)ことから、混合軸が、混合槽一端に取付けられた軸受3と減速機9、10の中空出力軸の軸受とにより軸承され、混合槽の他端の軸受が省略されたため、本件発明との文理上の相違が生じたものであるが、軸上減速機取付においては、一般に連結ロッドによる取付及び反力支持の方法と、フランジによる取付及び反力支持の方法とがあり、そのうちフランジによる取付及び反力支持の方法を採用した場合は、混合軸(被動軸)を支承する軸受のうち減速機取付側の軸受が省略可能となり、減速機の中空出力軸に装着された軸受によって混合軸(被動軸)を支承しうることは当業者の常識であり、本件発明の第一国出願日前から公知であった。すなわち、右の相違点は軸上減速機の取付及び反力支持方法において公知であり想到が極めて容易で何らの特徴もないフランジによる方法を採用したことの必然的な結果にすぎない。結局、ト号物件の右構成と本件発明の構成との文理上の相違は、すべてト号物件がフランジ接合という公知の支持方法を採用したことによる必然的な結果である。従って、軸上減速機のフランジによる取付及び反力支持方法と連結ロッドによる取付及び反力支持方法の作用効果は同一であり、かつ全く同一の技術思想の上に成り立っており、その間の置換可能性及び置換容易(自明)性は明らかであり、かつ本件発明の非特徴的部分の置換であるので、右の相違点は、本件発明に対して、単なる設計上の微差、均等ないしはその迂回と認められ、ト号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。被告は「保守の容易性」という作用効果の不存在を主張するが、ここで問題とするべきは軸上減速機の反力支持手段としての作用効果の同一性であり、その点で右のとおり同一であるから、二軸強制混合機としての作用効果も全く同一である。更に、ト号物件における軸上減速機は混合槽にボルト止めされたフランジの大径端にボルトにより固定されているが、ボルトの着脱により減速機をフランジないしは混合槽に固定、離脱せしめることを当然に予定したものであるから、保守の容易性という作用効果も奏する。
4 争点4(被告らの支払うべき損害賠償ないし不当利得の金額)について
(一) 被告北川鉄工所関係
(1) 被告北川鉄工所は、昭和五四年一一月一四日から昭和五八年二月二八日までの間、業として、イ号ないしニ号物件及びト号物件を製造販売した。
このうち、昭和五四年一一月一四日(本件特許出願公告日)から昭和五七年三月二三日(本件特許権の設定登録日)の前日までの間の製造販売行為は、出願公告に基づくいわゆる仮保護の権利について原告が有する完全独占的な、通常実施権と同等な内容の実施権の侵害であり、同被告は原告に対し右権利侵害行為による損害賠償義務を負う。けだし、原告は、本件実施契約に基づき、ベーハーエスが右出願公告に基づき取得した仮保護の権利に関しても完全独占的な実施権を有するところ、特許法上、いわゆる仮保護の権利について通常実施権の許諾を認める明文の規定はないが、出願公告後にされる通常実施権の許諾について、特許権の設定登録の前後によって、被許諾者の権利の内容が変わるものとは意識されていないこと、また、実質的にも、仮保護の権利について完全独占的な実施権を許諾された者を、特許権の設定登録後に完全独占的通常実験を許諾された者と区別して扱うべき理由がないことから、仮保護の権利について完全独占的な実施権を有する者は、その権利の侵害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権を有するものと解すべきであるからである。
次に、昭和五七年三月二三日(本件特許権の設定登録日)から昭和五七年一二月二四日(本件専用実施権の設定登録日)の前日までの間の右製造販売行為は、本件特許権について原告が有するいわゆる完全独占的通常実施権(特許権者自身の実施も制限される独占的通常実施権)の侵害となる。
更に、昭和五七年一二月二四日(本件専用実施権の設定登録日)から昭和五八年二月二八日までの間の右製造販売行為は、本件専用実施権の侵害となる。
(2) 同被告は、被告各物件を別表の販売価格欄記載のとおりの価格で販売し、その総売上高は一〇億六四三七万円であり、そのうち同被告が得た純利益率はその二〇パーセントを下らないから、右販売行為により同被告は二億一二八七万四〇〇〇円を下らない利益を得た。
(3) 同被告の右侵害行為により原告が被った損害の額は、右の同被告が得た利益と同額と推定され、あるいは、本件の事実関係においては右の同被告が得た利益と同額と推認される。そのうち、推定については、昭和五七年一二月二四日(本件専用実施権の設定登録日)から昭和五八年二月二八日までの間の原告の損害額については、特許法一〇二条一項の適用により、昭和五七年三月二三日(本件特許権の設定登録日)から昭和五七年一二月二四日(本件専用実施権の設定登録日)の前日までの間の原告の損害額については、同項の類推適用により、昭和五四年一一月一四日(本件特許出願の出願公告の日)から昭和五七年三月二三日(本件特許権の設定登録日)の前日までの損害額については、同法五二条二項において準用する同法一〇二条一項の類推適用により、いずれも同被告が前記侵害行為により受けた利益の額が原告の損害と推定される。
(二) 被告水戸コンクリート商事関係
同被告は昭和五四年一二月ころ被告北川鉄工所からハ号物件一台を一七〇〇万円で購入し、そのころ以降これを無権限で使用することにより原告に損害を与えた。そして、右損害の額は、右購入価格に対する適正な実施料率により計算した実施料相当額を下回ることはないと考えられ、また右の適正な実施料率を少なくとも四パーセントと解されるので、右損害額は六八万円である。
仮に、右損害賠償義務が認められないとしても、同被告が右実施料相当額の支払いを免れたことにより、原告は右と同額の損失を被ったので、原告は同被告に対し右同額の不当利得返還請求権を有するので、これを予備的に請求する。
(三) 被告東亜生コンクリート関係
同被告は昭和五七年五月ころ被告北川鉄工所からト号物件一台を一七五〇万円で購入し、そのころ以降これを無権限で使用することにより原告に実施料相当額七〇万円の損害を与えた(右実施料相当額の計算関係及び予備的請求については前記(二)と同旨であり、後記(四)、(五)についても同様である。)。
(四) 被告田子浦第一生コンクリート関係
同被告は昭和五五年八月ころ被告北川鉄工所からイ号物件一台を八二〇万円で購入し、そのころ以降これを無権限で使用することにより原告に実施料相当額三二万八〇〇〇円の損害を与えた。
(五) 被告二日市生コン関係
同被告は昭和五五年九月ころ被告北川鉄工所からハ号物件一台を一五五〇万円で購入し、そのころ以降これを無権限で使用することにより原告に実施料相当額六二万円の損害を与えた。
二 被告らの主張
1 争点1(構成要件B「混合槽1は自己支持構造であること」)について
(一) 本件発明を原告主張の内容のものと理解すると、その技術思想は特許に値するだけの高度性を有するものとは到底いえず、本件発明が特許された理由を合理的に説明することは不可能であるから、本件特許の出願経過を斟酌したうえで、出願前に公知でない反力支持手段である「反力系のリンク状釣合機構」を、本件発明の必須構成要素とするものと解すべきである。即ち、特許請求の範囲にいう「混合槽1は自己支持構造であり」とは、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」を混合槽に直接取り付ける構造を意味するものと解すべきであり、この「反力系リンク状釣合機構」とは、「左右に各一台の減速機を配し、その取付台同志を結合する何らかの結合具が、混合槽に設けたピンによって一点支持される構成になっている機構」を意味し、それは、特許請求の範囲にいう「自己支持構造」又は「駆動装置」の概念の中に包摂されて、必須の構成要件となっていると解すべきである。その根拠は以下のとおりである。
(二) 本件明細書の記載
「自己支持構造」の具体的内容は、明細書の記載自体から明らかであるとはいえない。即ち、
(1) 「自己支持」とは、一般的には「自己を支持する」ことを意味する概念であって、「他者」を「自己によって」支持することを表す語句としては通常使用されていない。
(2) 原告引用の本件明細書の「自己支持構造」に関する記載は、「本発明の目的は上述の様な欠点を除去し、自己支持形でかつ一体形というコンパクトな構造によって、より新しく簡単な混合機を提供し、費用及び空間を節約し、保守の必要が少なく、総合的な見地からより経済的な二軸強制混合機を製作することにある。即ち、混合槽は自己支持構造であり、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取りつけられて一体形を成す」(公報三欄一一ないし一九行目参照)となっており、「即ち、」という語でその直前にある文を詳説する形式になっているのであるから、その記載は、「自己支持形でかつ一体形というコンパクトな構造」を説明するものであるということはできても、その全部が「自己支持形の構造」の説明であるとか、「一体構造形」の説明であるとは直ちにいえない。むしろ、「混合槽は自己支持構造であり、」と、「駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取りつけられて一体形をなす」に分けることができ、前者は「自己支持形の構造」に関する記載、後者は「一体形構造」に関する記載であると見るのが当業者の常識的な読み方であるというべきである。従って、右記載部分が本件明細書の発明の詳細な説明中にあることを根拠に、「自己支持構造」の意味を原告主張の如く解することは無理である。
また、本件明細書中の、「混合槽1は溶接構造で作られ、混合具2、混合槽31、軸承3、駆動装置5(4、9乃至12)、エアシリンダ6及びローラ状の排出用滑り弁35が混合槽1に取付けられており、かつ混合槽1は完全自己支持構造として独立懸架されている。」(公報三欄二三ないし二八行目)との記載では、「完全自己支持構造」の語は、接続詞「かつ」で結語表記されているのであるから、混合具2その他の部材が混合槽1に取付けられていることとは別のことを意味するものとして使用されていることが明らかである。また、右記載からは、「自己支持構造」に「完全」と「不完全」の二種類あるらしいことが窺われるが、混合具その他の部材の支持に関しては、単に「支持する」か「支持しない」かの二態様があるだけであって、「不完全な支持」という概念は、危険のない安全性の高い構造体としての混合槽を前提にする以上は、成立の余地がないから、自己支持構造の語を原告主張の如く解することはできない。更に、「完全自己支持構造として独立懸架されている」との記載で用いられている「懸架」という語は、マグローヒル科学技術用語大辞典(乙二六)によれば、車輪などに加わる衝撃が車体になどに直接伝達されるのを防止するための衝撃緩和的な支持態様を意味するものであるから、右部分からは、本件特許出願人が、「自己支持構造」の語を本質的に衝撃緩和的な駆動装置の支持構造として使用したものであることが明らかであるとともに、本件発明の混合機は右衝撃緩和の程度が大きいのでこのことを強調するために「完全自己支持構造」と称したのではないか、と推論される。
(3) 「自己支持構造」の語は、本件特許出願時の明細書においても、特許請求の範囲第一項の記載中に用いられていたが、その記載は、「自己支持構造の混合槽1は、足場に無関係に、外方にシールした混合胴体2およびその軸承、混合アーム28を支持する混合軸31上に取付け可能の混合機駆動モータ4、およびローラー状の排出用滑り弁35を担持することを特徴とする混合機。」となっており、仮に「自己支持構造」の意味を原告主張の如く「混合具2、混合軸31およびそのシール装置、駆動モータ4を含む駆動装置、及びローラー状の排出用滑り弁35のいずれをも、混合槽自体が担持すること」を意味するとすると、右記載は完全な重複記載であったということにならざるをえず、このことは「自己支持構造」の語が決して明確なものではないことの証左である。
また、本件特許出願公告時の特許請求の範囲第一項は、「混合槽1は自己支持構造であり、さらに駆動装置5は混合槽1に軸承された混合軸31に取付可能で、混合軸31は外部に対してシールされ、軸受3を介して混合槽1に保持され、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられていることを特徴とする二軸強制混合機。」と記載されていたが、「自己支持構造」の語が右の意味を持つとすると、その概念は「さらに」に続く部分に記述し尽くされているから、それとは別に「混合槽1は自己支持構造であり、」との記載がなされている理由が説明できないし、その記載の次に、新たに別の要件を付加する場合に常用される「さらに」という語句を置いた上で、構成に関する記述を置いていることとも矛盾する。
(4) 本件明細書には、(2) で摘示の記載の他に自己支持構造の語を説明する箇所はなく、本件特許出願時の明細書には、発明の詳細な説明中に、「自ら支持し、完成した形を有する混合槽」という記載があったが、補正後の明細書には存しない。従って、特許請求の範囲にいう「自己支持構造」の語句は、本件明細書の記載だけからは、決して一義的に明確な意味を有するとはいえない。
(5) 本件明細書に掲げられた実施例も、いずれも反力相殺機構を介して反力を支持する態様で記載されており、作用効果の記載からみても、反力相殺機構を介さない態様での反力支持構造を採用することについて何らの示唆もされていない。
(三) 本件特許出願時の明細書の補正
本件特許出願時の明細書の発明の詳細な説明中には、「この課題は、本発明に従い、自ら支持し、完成した形を有する混合槽に、足場から独立して、外に対してシールした混合胴体およびその軸承、混合アームを支持する混合軸の上に取付け可能の混合機駆動装置、およびローラー状の排出用滑り弁を、装備することにより、解決することができる。」という記載があり、右記載によると、混合槽が自己支持構造であるというのは、混合槽が自己を他の構造物によって支持するのではなくて、自ら支持している、即ち自立していることを指し示すことが明白であった。ところが、拒絶理由通知に対応して行われた補正に際して、右記載は脱落し、これと交換的に「混合槽1は完全自己支持構造として独立懸架されている」との記載が加入された。従って、右補正によって、「自己支持構造」の語句は「自立性」を意味するものから、「衝撃緩和的な支持態様」を意味するものに、その意味が変化したものというべきである。
(四) 本件特許出願前の公知技術と特許異議答弁書の記載
(1) 本件特許出願前の公知技術
本件特許の第一国出願前には、次の公知技術が存した。
<1> 実用新案出願公告公報昭和三六年二九九七五号(乙二)記載の混和物製造装置
右装置は本件発明と同じ二軸強制混合機であって、その構造を本件発明の構成要件と対比すると、
i 減速機やモータの配置に関する記載がないこと(構成要件Ac参照)
ii 減速機の取付け方に関する記載がないこと(構成要件C参照)
の二点において相違するのみで、その余の構成要件を充足する構成を備えている。
<2> 市販されていた「CAVEX」軸上減速機CUHA型(乙七の1・4図、甲二六)
減速機とモータとを組み合わせたものであって、減速機の入力軸と駆動モータの軸が減速機の出力軸(中空軸)に対して直角に配置された構造を有し、駆動対象である軸の軸端に嵌合装着し得るものである。
<3> 特許出願公告公報昭和四五年三五九五四号(乙三一)記載の材料調制装置
<4> アメリカ合衆国特許公報二九六一二二四号(乙一三)記載のアスファルト用パグミルミキサー
本件発明の構成要件Bを原告主張の如く解すると、右<1>の混和物製造装置が本件発明の構成要件の大部分を具備しており、残余の構成要件は右<2>の軸上減速機が具備している。しかも、右軸上減速機を、右混和物製造装置のモータ及び減速機として適用するに際しては、単に二台の軸上減速機を、その本来の用法に従って混和物製造装置の二本の混合軸に嵌合すると共に、技術常識に従って軸上減速機の相互の入力軸を弾性カップリングや接手などにより連結して同期回転とし、適宜の手続で反力支持(トルク・サポート)を行うだけでよいのである。
二台の減速機をそのように装着した公知例としては右<3>(乙三一)の材料調制装置がある。二軸強制混合機に関して、二個の軸上減速機をそれぞれ二本の混合軸に設けてこれを直接駆動するとともに、軸上減速機の二本の入力軸の回転を同期させることにより二本の混合軸を同期回転させることも、全て乙第三一号証に記載されて公知であった。乙第三一号証や乙第一三号証に記載されている技術に関する知見を前提として本件発明をみると、原告が主張する内容として理解するとすれば、本件発明は、乙第二号証記載の技術と、乙第七号証又は甲第二六号証記載の技術とから、当業者なら極めて容易に推考することができた(すなわち、進歩性を欠如する)ことは明らかである。
従って、これを実施することは既に右当時からすべての当業者に許される法的状態(いわゆる自由技術の状態)にあったといわなければならないから、本件発明は、「自己支持概念」を本件特許出願人の異議答弁書の記載と西ドイツ特許裁判所の決定を斟酌して合理的に解釈し、その範囲内で有効なものとして取り扱うほかないのである。
(2) 西ドイツ特許裁判所の決定
本件特許の第一国出願である西独特許出願P二一四一九〇八・九は、その特許請求範囲第一項(主請求範囲)の発明が、本件発明とほぼ同一内容であったが、出願公告後の特許異議において、異議申立人から右「CAVEX」のカタログが提出されたために特許を拒絶され、該拒絶審決に対する西ドイツ特許裁判所の抗告審においても一九七七年九月に抗告が棄却されている。右西ドイツ特許裁判所の決定書には、「混合槽及び駆動装置を支持する従来の基礎フレームを除去するという課題に直面した当業者は、先ず、別個の支持を必要としない駆動要素を求める。この場合、当業者は、駆動要素のマーケットを探し、正にこの課題解決のために製作された完全な駆動装置が専門メーカーから市販されていることを知る。すなわち、当業者は、伝動機構のカタログ「CAVEX」の第一九頁第1・4図の差込み式伝動機構CUHAがこの課題の解決に好適であることを知るに違いない。何故ならば、このウォーム伝動機構を使用すれば、駆動モータと混合軸との間の所要の減速が可能であるのみならず、この伝動機構は、本願の主請求範囲の特徴bと同様、混合軸に差込み得る様に構成してあると共に、混合槽に支持できるトルク支持台をも備えているからである。」、「二軸強制混合機の改良の枠内で設定された上述の如き課題の解決に、この市販の差込み式伝動機構の使用が不適当であるような事情は認められず、出願人もこのような事情の存在について何も述べていない。」、「すなわち、公知の先行技術と異なる特徴は、自明(例えば、駆動モータの位置可変性)であるか、或いはまた、二軸強制混合機に市販の差込み式伝動機構を発明性を伴うことなく単に使用したことにより必然的に生ずる方策である。従って、主請求範囲の特徴は、出願人の主張とは異なり、特許法の意味における組合せではない。」旨の判断が示されている。
(3) 本特許異議事件における本件特許出願人の主張
<1> 本件発明の第一国出願日前の公知技術としては、前掲のものの他に、西ドイツ公告公報一〇五八一八八(乙三)があり、同公報には、混合具を駆動するためのモータ(駆動装置)が直接槽自体に取付けられた混合槽が図示されていた。なお、同西ドイツ公報に記載の駆動装置は、モータのみからなり、減速機を備えていないが、本件明細書の記載(公報三欄一六ないし二〇行目参照)によれば、本件発明における「自己支持構造」とは「駆動装置」その他の装置が混合槽に直接取り付けられていることを要し、かつそれで足りる記載であったから、右西ドイツ公報は駆動装置(モータ)が混合槽に直接取りつけられている公知例に当るし、また、「自己支持構造」の語を、出願時の明細書に記載している如く「自立性」を意味するものと解しても、その点も右公報によって公知であった。そこで被告北川鉄工所は、特許異議の申立をし、特許異議申立理由補充書で、特許法六四条による補正前の特許請求の範囲第一項の発明の特許出願に拒絶理由があることを主張し、その際、右西ドイツ公告公報一〇五八一八八(乙三)を甲第一号証、実用新案出願公告公報昭和三六年二九九七五号(乙二)を甲第五号証として提出して、「本願発明による『<1>混合槽1は自己支持構造であり』の構成事項は、甲第一号証により公知である。そこには、二つの駆動モータが混合槽の前壁に固設され、混合槽は駆動部の支持要素として利用され、自己支持構造であることが示されている。」と主張した。その他、右西ドイツ特許裁判所の決定書謄本を甲第六号証、前記「CAVEX」軸上減速機のカタログ(乙七)を甲第七号証として提出した。
これに対して本件特許出願人(現在特許権者)は、特許異議答弁書(乙四の一)において、「本発明の自己支持構造は、各構成要件の結合の結果として達成されるものであり、上記効果をもたらすものとしての自己支持構造ということである。しかるに、異議申立人の主張によると、構成要件の<1>項のみをとらえて、甲第一号証と比較し、この引例の装置が混合槽を有し、その混合槽に電動機が取付けられているものを見れば、それが即ち自己支持構造と断定しており、これは本発明における自己支持構造を全く理解していないものであって、単に自己支持構造という用語を表面的にとらえて、これをことさらに強調するにすぎないものである。」(九頁一一行目ないし一〇頁四行目)と答弁した。これを整理すると、<1>自己支持構造を「自立性」の意味にとるのは表面的な理解でしかなく誤りであること、<2>「自己支持構造」の語は、正しくは「上記効果」即ち、右引用部分の直前に記載されている「混合軸31に加わる反力が相等しなければ前記自己支持構造におけるピンの支持点には全く反力が作用せず、又その反力が異なる場合はその差分のみが支持点ピンに加わるにすぎないので、この様な駆動部の保持方法は振動が少なく、簡単な一体化構造を実現できる」効果(九頁四ないし一〇行目)をもたらすものとしての自己支持構造と理解しなければならないこと、の二点を述べたのである。従って、本件特許出願人は、右の如き異議答弁をすることによって、「自己支持構造」の語は出願当時の明細書で使用していた「自立性」とは異なる意味、すなわち、反力相殺という技術的効果を奏することのできる支持構造の意味であることを宣言したということができる。
<2> 更に、「(6) ドイツ特許裁判所の判決について」の項中では、「甲第一号証についてはこの答弁書(4-1) においてすでに説明したように、この先行技術は本発明とは全く別異のものであり、従って、本発明の自己支持構造を、これから導き得るとする申立人の主張は受入れられない。又、これに対しドイツ特許裁判所は判決理由を述べるとき、甲第一号証の明細書に書かれた公知の混合槽は歯車等の減速機要素を必要とすることなく壁面に直接フランジ接合されると言う事実を無視していたか、又は気がついていなかったのいずれかであり、本発明の場合は、ウォームギヤーと共にトルク均合機構を用いたいわゆる駆動部を明らかに必要とするのである。」(二六頁末行ないし二七頁一二行目)と記載し、前記答弁の主旨が繰り返し強調されている。しかも、右において、本件特許出願人は、ドイツ特許裁判所の決定について触れ、これを非難する記述もなされていることに鑑みると、右引用の「トルク均合機構を用いたいわゆる駆動部を明らかに必要とする」との記載部分は、ドイツ特許裁判所と同様の判断がなされるのを避けるために、ドイツ特許の出願過程では主張したことのなかった新たな事項、すなわち、自己支持構造の意味の機能的限定を端的に述べている箇所であると容易に理解できる。さらに、本件出願人は、同項中で、本件特許発明が、「CAVEX」カタログに記載されているような各ウォーム歯車減速機毎に、反力(トルク)を別々に支持するものではなくて、いわゆる「反力相殺機構」によって二台の減速機の反力を一点で支持する構成を必須とするものであることを繰り返し強調している。即ち、同項中で、「CAVEX」カタログの図1・4に触れて、「トルクを二枚のサポート板で支持すると明記しているが本発明ではこのようなサポート板は使用していない。要するにこの証に関する限りウォーム駆動機のトルクを互に均合関係で支持させようとする思想は少しも示されていないのである。」(二八頁五ないし一〇行目)と述べている。これは、「本発明」では、「CAVEX」減速機に付属しているトルク支持板等の、各軸上減速機毎に別個独立に反力の支持を行う従来周知の反力支持手段を採用するのではなくて、二台のウォーム駆動機のトルクを一括して互いに釣合関係で支持させるところの新規な反力支持手段、すなわち被告らのいう「反力相殺機構」を採用しているということを強調するための記述に他ならない。この記載が、対応する西ドイツ特許出願の主請求範囲に記載した発明の特許性を否定した西ドイツ特許裁判所の決定に関する意見を述べるために設けられた項の中で記載されていることに鑑みれば、ここにいう「本発明」なるものが、本件特許請求の範囲第四項の発明ではなくて、同第一項の発明(本件発明)を指すものであることは明らかである。続いて、同異議答弁書には、「本発明における駆動装置がトルクの均合機構として混合槽に一点支持され、又それに伴う実施上の効果は答弁書(3) 本願発明の効果において詳述した通りであり、又、この様なことが甲七号証から容易に導かれるものでもない。従って、申立人によるCAVEX駆動機の流用並にそれによる当然の結果としての反力均合機構は当業者なれば容易に導かれるとする主張は全く見当違いである。」(二八頁一〇ないし一八行目)との記載がある。この記述は、対応する西ドイツ特許出願の主請求範囲記載の発明とは異なり、本発明は、その駆動装置が、「トルクの均合機構として混合槽に一点支持されるもの」であることを明らかにし、駆動装置にこのような特徴があることを以て、本件発明の推考困難性(進歩性)を根拠付けようとしたものに他ならない。
本件発明の如き併合出願においては、そのうちの従属的な請求範囲に記載されている発明が、これを独立の発明として単独で評価するときには独立して特許に値する進歩性が認められるような場合であるとしても、主位の請求範囲に記載されている発明自体に進歩性が欠如するときは、全体の特許出願が拒絶される法的取扱になることは日本と西ドイツにおいて共通であり、しかもこの時点では既に本件特許出願人も、対応する西ドイツ特許出願がその主請求範囲の発明自体が「CAVEX」カタログにより高度性を否定されて、拒絶が確定したことを知っていたのであるから、本件特許出願人が、この部分で「本発明」の進歩性に触れていることは、この部分を記述するに際し、右のトルクの均合機構を、特許請求の範囲第四項の問題としてではなく、同第一項(本件発明)の問題として認識していたことを明らかにするものである。
また、特許異議申立人は、「CAVEX駆動機の流用」に関する主張はしているが、「反力均合機構」に関する主張はしていないから、「CAVEX駆動機の流用による当然の結果としての反力均合機構」という文言は本件特許出願人自身による思考の産物である。特許異議申立人の主張がないにもかかわらず、右の如き主張があったかの如き記載をしていることは、本件特許出願が西ドイツにおけると同様の理由で拒絶される虞れがあることを危惧した本件特許出願人が、特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)は、西ドイツ特許出願の主請求範囲とは異なり、「反力均合機構」を必須の構成要素とすると認定されれば進歩性が是認されるはずであるとの確信に到達し、その結果、右の如き主張があったかの如き錯覚を抱いたものと推察されるから、本件特許出願人が、特許異議答弁書を作成するに当たり、右「反力均合機構」、従って、被告ら主張の「反力相殺機構」を特許請求の範囲第一項の進歩性に関する問題として認識していたことに疑いの余地はない。
さらに、同項中では、「上述のCAVEX差込み式ギヤーを本願において用いる上において特徴とするところは、この答弁書の冒頭において駆動装置の反力系リンク状釣合機構として詳説したように、単にCAVEX差込み式ギヤーを使用したというだけのものではなく、該反力系リンク状釣合機構を形成する一要素として用いられていることであって、しかもそれは電動機起動時の単なるショックアブソーバーでもなく、混合機のあらゆる運転状況において生ずる反力系を極めて合理的に相殺して支点に作用する反力を極力減少せしめ、振動を極限に防止しうるのに最も効果的な釣合構造を実現した点である。」(三〇頁七ないし一九行目)と述べている。この記述が、前引用の各記述を受けて、本件特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)に関し、被告らのいう「反力相殺機構」によって二台の減速機の互いに逆向きの反力を一点で支持するところの「一体としての駆動装置」を必須の構成要素にすることを、明確に示したものであることは明白である。
要するに、本件特許出願人は、「CAVEX駆動機の流用並びにそれによる当然の結果としての反力均合機構」が特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)の構成要件であることを明確に主張していたものであり、この主張が認められれば、進歩性は是認される、との自信を抱いていたことも明らかである。従って、本件特許出願人は、特許異議答弁書において、本件特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)の技術的範囲に意識的な限定を加えたということができる。そうすると、特許請求の範囲にいう「自己支持構造」とは、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置が混合槽に直接取付けられている構造」と解するのが合理的である。
<3> 本件特許出願人は、特許異議申立人の提出した異議資料に対して個々具体的に反論するに先立ち、特許異議答弁書の「(3) 本願発明の効果」の項で、三頁余の紙面とB四版の参考図とを費やして、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」の説明をし、その冒頭において、「次に、反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置について説明する。これは、本発明の中で最も重要な部分であり、このような合理的な駆動装置が自己支持構造で一体形の二軸強制混合機を可能ならしめたといえる」(七頁一五ないし二〇行目)と記載し、参考図第一図に関する説明の結論部分では、「このようにすることによって、駆動される軸3を原軸としてほぼ三次元的釣合機構が構成され、軸3の反力は打消され、支点7によって簡単に駆動装置が混合槽に一体化され、又、混合作業中の厳しい衝撃に充分耐え、振動のない二軸強制混合機を可能としている。」(八頁一四ないし二〇行目)と記載している。
特許請求の範囲第二ないし第四項が、いずれも特許請求の範囲第一項の記載を引用している場合は、特許異議申立が特許請求の範囲第一項の発明に対してなされたときは、同第四項の発明だけが如何に優れた効果を発揮し、それ故にまた如何に想到困難なものであるとしても、特許請求の範囲第一項の発明について、その効果の優れている点および想到困難性が認められなければ、その特許出願は全体として拒絶されるものであるから、答弁書の総論部分ともいえる極めて重要な位置で、このようにまとまった紙数を費やしてなされた説明記載が、専ら第四項の発明にのみ関係のある事項であるなどと言うことは常識では考えられない。また、自己支持構造を可能ならしめているということは、即ち「自己支持構造」の必須構成要素に他ならない。然るに「自己支持構造」の語は特許請求の範囲第一項の構成要件を成すものである。故に、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」は特許請求の範囲第一項の「自己支持構造」に内在する必須構成要件でなければならない。この項の記載からも、本件発明に係る混合槽の自己支持構造が、反力相殺機構を構成する駆動装置を混合槽に直接取り付けることによって、二本の混合軸の軸トルクの差分だけが反力として小さく支持ブラケットに作用するにすぎない構成になっているので、混合槽に無理な力が作用せずに保護されるのであり、それが本件特許発明の効果であることが明らかである。
<4> また、本件特許出願人は、特許異議申立人の提出した甲第三号証(本件訴訟における乙八と同じ)に対する反論のなかで、「本願発明においては減速機が直接混合軸に嵌込まれ、同用ハウジングを要さず、二つの混合軸・カップリング・減速機・駆動モータから構成された平衡機構を介した駆動部を含む自己支持構造という特徴を有するため、前記不都合を解消したコンパクトで防音・防塵・耐衝撃性にすぐれた混合機であるという点でこの引例とは異なる発明であることは明らかであり、又進歩性を当然に具有するものである。」(一九頁七ないし一七行目)と述べているが、本件特許出願が特許されるためには、特許請求の範囲第四項の発明に進歩性が認められるだけではなく、特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)にも進歩性の認められることが必要であるから、「本願発明は・・・進歩性を当然に具有する」旨の右記載は、当然に特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)に関する記述でもなければならない。
<5> 特許請求の範囲第一項の発明に限定要件を加えたものを第二項の発明、第二項の発明に限定要件を加えたものを第三項の発明、第三項の発明に限定要件を加えたものを第四項の発明として、いわゆる併合出願により、特許請求する場合においては、第一項の発明よりは第二項の発明が、第二項の発明よりは第三項の発明が、更には第三項の発明よりは第四項の発明の方が、いずれもより構成が複雑化する関係上、進歩性を認められやすい関係にある。従って、進歩性欠如を理由とする異議申立を受けた場合には、先ず何をおいても特許請求の範囲第一項の発明が進歩性を有することを論証することが必要であり、且つそれをもって足りるのである。故に、乙第四号証の一(特許異議答弁書)の「反力系リンク状釣合機構」に関する記述は特許請求の範囲第四項についてのものであって、特許請求の範囲第一項には無関係であるという原告の主張は、必要のないことを多くの時間と紙数を割いて記述したということになり、特許実務上の論理に照らし到底ありそうにもないフィクションであるといわなければならない。
<6> 特許庁審査官は、右の特許異議答弁書における答弁の記載を理解して、出願人が主張した「自己支持構造」については、異議申立人の提出した公知文献に記載がないと判断し、本件発明につき特許査定をしたものと解される。「反力相殺機構」に関しては、本件明細書の詳細な説明中に、その具体例が三個もの実施例を用いて説明されているうえ、前記のとおり本件特許異議答弁書(九頁一一ないし一五行目)においても明確な定義付けを行っていたものであるから、担当審査官が、右の点が明白になったため、それ以上に特許請求の範囲第一項の記載を答弁書中の右説明に対応して限定補正させるには及ばないと考え、本件特許出願人の提出した補正明細書の内容そのままの状態で、特許の査定をしたことは十分あり得ることである。また、「リンク状釣合機構」を構成しないような単なる駆動装置を混合槽に直接取り付ける「自己支持構造」は、本件特許出願前から既に乙第三号証に記載されていたのであるから、もし特許庁審査官が、本件発明における「自己支持構造」が原告主張の如く「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」を必要としないものであると理解していたとすれば、特許異議決定において、異議申立人の提出した証拠中には「自己支持構造」の記載がないなどと記載するはずがなく、むしろ、「自己支持構造」は、既に乙第三号証に記載されて出願前から公知であったから特許異議の申立ては理由があるとの決定をしたはずである。
(五) 二軸強制混合機の用途との関係
(1) 本件特許に係る二軸強制混合機は、「特にコンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる」ものとして、いわゆる用途限定がされている。右用途に使用する二軸強制混合機は、混合作業中に混合対象材料から激しい衝撃を受けるため、耐衝撃性の大であることが最先に要求されるから、従来の二軸強制混合機における駆動装置の基礎を単に除去するというような、耐衝撃性の要求を満たしえないような態様でのコクパクト化などは机上の空論にすぎない。即ち、従来の二軸強制混合機における反力支持手段は、混合機自体とは別の基礎ないし特別のフレームからなっているが、それ自体は相当に空間容積が大きいものであったため、二軸強制混合機のコンパクト化を推進することに対する障害として意識されており、本件特許出願人も特許異議答弁書においてそのように主張していた。そのように、駆動装置を据え付けるために、混合機自体とは別の空間容積の相当に大きい基礎ないし特別のフレームが必要とされた理由は、馬力の大きい駆動装置の反力を吸収ないし支持することは機械的強度の十分大きい大型のフレームまたは基礎を用いない限り不可能であると考えられていたためである。これを逆に言えば、混合槽自体でその反力を吸収ないし支持しようとすれば、混合槽自体の強度を十分補強しない限り、混合槽が破壊する危険があったということである。そのような駆動装置を全て大型の基礎ないし特別のフレームに据え付けて反力を支持する方法をとっていた従来の二軸強制混合機から、大型の基礎ないし特別のフレームを除去して、駆動装置を単純に、即ち混合槽自体の強度を補強することなく、混合槽へ直接取り付けることによってコンパクト化を図ったとしても、混合槽自体は、本来、減速機の受ける反力を支持するように設計されているものではないから、各混合軸各々の軸トルクの全反力よりも機械的強度において劣る混合槽の槽壁または該槽壁に取り付けた反力支持用のブラケットが破壊を来す危険があり、耐衝撃性を要求されるコンクリート混合用の二軸強制混合機としては到底使用に耐えないものである。
(2) 従って、前記本件発明の目的及び作用効果は、本件発明に係る二軸強制混合機がその用途に適合し得るような耐衝撃性を具備していることを当然の前提にしているものとしてこれを読むのでなければ、技術的に全く意味をなさず、本件発明は「産業上利用できる発明」としての要件を欠如することになってしまう。本件発明は単なる二軸強制混合機ではなくて、用途の限定された、耐衝撃性の大きいことが当然に要求される種類の二軸強制混合機であるから、「自己支持構造」の概念も、装置自体の耐衝撃性が十分保障されるような技術手段を内包するものとして、理解されなければならない。つまり、本件発明が新規かつ進歩性があるものとして特許された技術的な意義は、次の如き互いに相反する要求、即ち、
イ 混合槽の基礎とは別に設けた基礎上に駆動部を据え付ける従来の駆動方法では、耐衝撃性につき何ら問題はないが、大きい空間を要する等の欠点があるので、何とかコンパクトな装置にしたい。
ロ 駆動部を、単純に混合槽へ直接取り付ける駆動方法では、混合槽の基礎と別個の基礎が不要になるから、それだけ装置全体がコンパクトになるが、コンクリート、ビチューメン混合物、石灰砂岩等混合用の二軸強制混合機の場合は槽自体が激しい反力に耐えられず破壊してしまう危険があるので、何とか駆動部の反力を吸収できる構造にしたい。
という二要求を、同時に解決したからに他ならない。
耐衝撃性を考慮の外において、ただ単に装置全体の占有空間を従来の二軸強制混合機よりもコンパクトにするという技術的課題を解決するだけでよいのであれば、何人でも、従来機において駆動部を支持するために用いていた混合槽の基礎とは別個の架台の使用を取り止め、乙第三号証のモータのように、駆動部を混合槽の混合軸に直接取り付けることは極めて容易に想到し得ることである。ましてや、本件特許の第一国出願前において、右の如き軸直結方式(スリップ・オン・ギヤ方式)のウォーム歯車減速機とモータとの結合装置が既に市販品として販売されていた(前記「CAVEX」軸上減速機CUHA型)のであるから、それを駆動部として採用し、これを混合槽へ直接取り付ければ装置全体をコンパクトにすることができると提案する程度のことは、何らの発明的工夫をも要せずになし得るのである。
もっとも、混合槽自体の強度を十分補強して、コンクリート混合時における駆動装置の反力が最大になっても大丈夫なようにしておけば、混合槽の破壊の危険がなく、且つそのような設計は本件特許の第一国出願時においても当業者の通常の能力の範囲内で行い得るものであったことは事実である。しかし、従来の如き大型の基礎フレームを必要とした駆動装置に替えて、前記市販の駆動要素である「CAVEX」軸上減速機の如きモータ付軸上減速機(二台)を利用してなる左右各一台の駆動機構を、槽壁の強度を補強することによって耐反力性を付与した混合槽に直接取り付け、各減速機の反力を個々別々に混合槽の槽壁で支持させることによって二軸強制混合機自体のコンパクト化を達成したとしても、混合槽の槽壁の強度を二台の減速機の反力に耐え得るように補強することは、それ自体大変な手間と時間と労力を要することであり、これにより従来の如き大型の基礎やフレームを取り除くことができるためたとえ占有空間の容積を大幅に減少しえたとしても、この程度のコンパクト化は、本件特許の第一国出願時において公知であったモーター付軸上減速機の発明自体が有していた「無フレーム化」という効果の言い換えに過ぎないから、そこには何ら特許に値する進歩性を認めることはできない。これに対して、二台のモータ付軸上減速機を適宜の連結具で連結することにより、一体としての駆動装置を構成し、この連結具の中途部分を混合槽の槽壁に設けた支持点ピンで一点支持することにより、混合槽の槽壁にそのまま、すなわち槽壁強度に何らの補強も加えずに、駆動装置を直接取付けた場合におけるコンパクト化の場合は、そのような手間等を要しないものであって、両者間には顕著な作用効果上の差異が存在する。
以上から、本件出願の対象発明が特許され得るとすれば、その根拠は、右のような当業者に自明の設計ではなくて、混合槽の槽壁自体には別段補強を加えなくとも、混合槽自体に加わる反力を極めて小さくすることができるようにして、混合槽の「自己支持構造」を可能にした点、即ち「反力系のリンク状釣合機構」を構成する駆動装置を直接混合槽に取り付けた点に求められなくてはならないのである。このように見てくると、特許異議答弁書の「本願発明の効果」の項の、「次に、反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置について説明する。これは、本発明の中で最も重要な部分であり、このような合理的な駆動装置が自己支持構造で一体形の二軸強制混合機を可能ならしめたと言える」(七頁一五ないし二〇行目)の意味も理解できるのである。
(3) 以上の点は、本件特許発明の出願過程における特許庁審査官の特許異議決定の付記理由を読解するにあたっても当然に考慮されるべきである。即ち、本件発明は、前述の如き相反する技術的課題を解決することによって、結果として「装置全体をよりコンパクトな構造としたこと」が新規且つ進歩性ある構成であると評価されたはずのものであるから、付記理由中で用いられている「自己支持構造」の語についても、これを単に槽への直接取り付けを意味する語としてではなく、駆動部支持用の独立の架台を省略することによって生じる槽自体の破壊の危険を防止するための技術的手段をも内包した概念として理解すべきである。
(4) なお、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」が特許請求の範囲第一項記載の本件発明の必須要件であるとしても、特許請求の範囲第二項以下の発明はそれに「モータ4を位置調整可能とした」限定を付したものであると理解できるから、右を必須要件とすることは、特許請求の範囲第二項ないし四項の発明記載とは何ら矛盾しない。
2 争点2(構成要件C「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられていること」の意味)について
(一) (着脱の容易性の概念を含む)
「着脱自在」の語句には、その字義からみても、出願経過から見ても、「混合軸31との結合離脱に手間を要しない」という意味での着脱容易性の概念が含まれている。
(1) 本件発明の構成要件E中の「排出用滑り弁35」も、保守その他の必要上当然に着脱が予想される装置であるが、特許請求の範囲の記載は単に「承台38に取付られている」となっており、「着脱自在に取付けられる」とはなっていない。従って、「着脱自在」の語は保守の必要から装着又は離脱され得るようになっていることとは別の、他の意味に用いられていると解すべきである。
(2) そもそも「自在」とは、思いのままなこと、束縛や障害のないことを意味する語であって、それ自体の中に「行為に対する抵抗が少ない」という意味を有している。従って、「着脱自在」は、その字義からして当然に「装着又は離脱することに対する手間が少ない」という意味での「着脱容易性」の概念を包含していると解すべきものである。
(3) 右解釈は本件特許の出願経過からも裏付けられる。即ち、構成要件Cは、本件特許出願に対する特許異議審査の段階において、特許法六四条による補正の際にいわゆる限定要件として追加されたものである。それ以前の段階の明細書中には「着脱自在に」の語句は皆無であった。そして、特許異議答弁書(乙四の1)には、「歯車9・10はスリップ・オン・ギヤとして形成され、混合軸31に取りはずし可能なように取り付けられている。」旨の記載がある(五頁一ないし三行目)。ここに「スリップ・オン」は「スリッポン式の」という意味の英語である(乙六)から、「スリップ・オン・ギヤ」とは、留め具などのついていない着脱容易な歯車を意味することは明らかである。のみならず、同答弁書には「本願発明においてウォーム減速機を混合軸に直接差し込む方法は混合機をコンパクトにし、工作法を簡単とし、防塵・防水も完璧となる。これらの効果は……(中略)……従来の多軸減速機をただ単にウォーム減速機にすりかえたものとは基本的に異なるものである。」(三一頁)との記載もある。従って、これらの記載に徴すれば、本件発明の構成要件Cにいう「駆動装置5の減速機9・10」は、混合軸31に直接差し込む方式の、従ってまたカップリング等による混合軸31への結合の手間を要しない、いわゆるスリップ・オン・ギヤとして形成されたウォーム歯車減速機であることが明らかである。
(二) (駆動装置の着脱自在も要件)
(1) 駆動装置の減速機が着脱自在になされているということは、駆動装置が着脱自在になされていること並びに駆動装置を混合槽に対して簡単に一体化できることと同趣旨であると理解すべきである。けだし、減速機はそれ自体が格別新規な技術的意味を有するのではなくて、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」の一要素であるという点にこそ、重要な意義を有するものであるし、特許異議答弁書(二頁一五ないし一八行目、八頁一四ないし二〇行目、一四頁五ないし九行目)においても、出願人はその趣旨の記載をしているからである。
(2) また、当初特許請求の範囲第一項に記載されていた「駆動装置5は混合槽1に軸承された混合軸31に取付可能で、」との文言が、「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ、」と補正されたが、この補正はいわゆる出願公告決定後の補正であり、特許請求の範囲の拡張は許されないから、右補正後の記載は、駆動装置5の混合軸への取付可能を要件とせずに単に「駆動装置の減速機」が混合軸に対して着脱自在になっていることだけが構成要件となっているわけではなく、「駆動装置」全体が混合軸に取付可能になされていること、及び「駆動装置の一要素である減速機」が混合軸に対して「着脱自在」になっていること、という二個の技術事項が構成要件になっていると解さなければならない。そして、減速機の他には混合軸に取付られている駆動装置の要素はないから、駆動装置全体は減速機のみによって混合軸に取付られている、即ち、駆動装置全体として混合軸に取付可能になされているのは、駆動装置の一要素である減速機が混合軸に「着脱自在」に取付けられており、その減速機に「駆動装置その他の要素」が全て連結されているためであると理解できる。従って、減速機の着脱自在とは、混合軸に対する駆動装置の着脱自在をも意味することになる。
(3) 前記特許異議答弁書において「着脱自在」の語句が「駆動装置」の語句とともに出現していることは、特許異議答弁書において、本件特許出願人が、自己支持構造の意味内容を、「反力系のリンク状釣合機構」(すなわち、「左右に各一台の減速機を配し、その取付台同志を結合する何らかの結合具が、混合槽に設けたピンによって一点支持される構成になっている機構」)を構成する駆動装置が混合槽に直接取り付けられている構造に変更したことに関連する。このような機構を構成する駆動装置は、左右の混合軸に各々一台の減速機がスリップオン式に装着されているとともに、その取付台同志を結合する結合具の中央部分が混合槽の槽壁に突出している支持点ピン(乙四の一末尾参考図第1図符号7)に嵌合され、これにより左右の取付台に加わる反力を相殺しつつ、左右の取付台により一体化された、結合体としての駆動装置全体を前記支持点ピンの一点においてのみ嵌合支持し、これ以外には、減速機自体は勿論のこと駆動装置全体としてもなんら混合槽との力学的支持関係を有しない。従って、駆動装置全体としての取り外しは、前記支持点ピンにおける一点嵌合を解き、しかる後に左右の減速機を混合軸から抜き取るという簡単な作業で極めて短時間のうちに行いうると共に、逆の取付けをも全く同様に行いうるものである。要するに、特許異議答弁書における「着脱自在」の語句の用いられ方と、これを根拠として本件特許の主請求範囲(第一項)に関して追加補正された「着脱自在」の語との関係を合理的に説明しようとするならば、「駆動装置の減速機」の「着脱自在」とは、駆動装置を全体として極めて容易に混合槽に着脱し得るようにするために、その構成要素である減速機を混合軸に対して差し込み式にしたことを指すものであると解釈しなければならない。
原告は、「着脱自在」の語は、単に軸上減速機をスリップオン式に混合軸に取付け、これから取り外すことのみを意味するとするが、出願前公知であった軸上減速機(「CAVEX」)自体の軸取付方法(スリップオン式)を主請求範囲に追加補正したところで技術思想の特許性が高められるはずはないから、その主張は出願審査経過に照らして是認できない。
なお、原告の発表に基づく、昭和五七年一月二一日付の新聞記事は、本件特許発明に触れて、その「特許内容」は、「二軸強制ミキサにおいて、駆動モータ軸と並行する減速機入力、すなわち減速機を用い、それらをミキサの槽が自分で支える構造にしておいて、駆動部全体がミキサの軸に自由着脱できるようにすることによって、ミキサ全体がコンパクトな構造になったこと」であると記載してあり、このことは、原告が、減速機の「着脱自在」が駆動装置全体の着脱容易性を意味するとの見解をとっていたことを示すものである。
3 争点3(被告各物件が本件発明の構成要件B及びC(ト号物件についてはB、C及びD)を具備するか否か)について
(一) イ号物件
(1) 連結ロッド50は、混合槽1に止着されておらず、単なる連結具にしかすぎない。また、駆動装置は、個々に混合槽の支脚間の架橋板により支持されており、各々のトルクは固定ブラケット55の箇所で個々に支持され(53、54)ており、反力系のリンク状釣合機構を構成していないから、構成要件Bを充足しない。
仮に本件発明にいう「混合槽の自己支持構造」を原告主張の意味のものとしても、その場合は駆動装置を構成する二台のウォーム減速機の反力の支持を混合槽自体で行う必要があるのに対して、イ号物件は、二台のウォーム歯車減速機9、10の各々を、混合軸より上方に位置する上部連結部材50及び56と、前記混合軸より下方に位置する下部連結部材53、55及び56によって一体的に固設して駆動部を構成した構造としており、その結果、前記二台のウォーム歯車減速機9、10により生起する反力が混合槽連結部材に作用する作用力となり、互いに逆方向に回転している二本の混合軸の回転トルクの釣合いが例え崩れたとしても、上下の連結部材は共に反力による作用力を受けて二本の混合軸が生起する回転トルクのアンバランスを相殺解消することができ、駆動部の構成部材のみで反力相殺の効果が得られるから、右反力が混合槽に伝達されないので、減速機の反力を混合槽自体で支持する必要がないという特徴を有する。
イ号物件の下部連結部材の一部であるターンバックル(正確には「固定ブラケット」)55を、混合槽に設けたブラケット58の部位で混合槽に溶接固定する構造になっているが、これは駆動手段の反力を混合槽へ作用させるためではなく、減速機を同期運転させるための弾性カップリングの芯出し調整を容易に行うための手段として、混合槽に溶接固定されたものの方が混合槽に対し回転及び(又は)移動するものよりも好ましいことから、同手段として、ターンバックル(固定ブラケット)55及びブラケット58を用いているものである。このことにより、右の内部的反力相殺作用は全く変わるところはない。
本件発明は、「混合槽の自己支持構造」を原告主張の意味のものとした場合、いわゆる「反力相殺機構」その他の従来公知の反力支持手段の採用を前提としなければ、到底実施できないものであったが、イ号物件の右技術思想は本件発明と反力相殺構造において根本的に相違する。
従って、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属しない。
(2) イ号物件の駆動装置の着脱は、固定ブラケット55の箇所で夫々別個の操作により行うものであって、容易に、着脱自在に行い得るものではないから、構成要件Bを充足しない。
(二) ロ号物件及びハ号物件
(1) 被告は、ロ号物件と全く同一の構成の横二軸混合機やハ号物件と実質的に同一の構成の横二軸混合機を実施例として記載し、かつ混合軸の軸端に軸上減速機を原告の主張する意味で着脱自在に装着することを明記した「横二軸混合機の減速機支持構造」に関する考案につき実用新案登録の出願をしたが、実質的には、本件発明の第一国出願日当時既に公知であった技術から極めて容易に推考できることを理由として、拒絶査定を受けた。してみると、仮に、本件特許出願人が、右考案を、本件発明の第一国出願日に実用新案登録の出願をしていたとしても、その当時既に公知であった技術から極めて容易に推考できるとして拒絶されたであろうことが明白である。このような、本件特許と同日に出願したとしても進歩性が認められずに実用新案登録すら認められないような技術思想は、本来万人が自由に実施することの出来る技術であるというのが当然の事理であるから、その技術思想に基づくロ号物件及びハ号物件は、いわゆる自由技術に属するとして、本件特許発明の技術的範囲から除外されるべきである。けだし、特許発明の保護範囲を及ぼさせてはならない「自由技術」は、当該特許発明の出願時の公知技術のみに限られる必然性はなく、特許権者の保護とパブリック・インタレストとの調和を図るためには、本来特許を取得しえないことが明らかな技術の全てを含むと解すべきであり、従って右公知技術から当業者が容易に推考し得る技術も自由技術であるとしなければならない。
公知技術をまとめると、混合槽が自己支持構造であるものとして、乙第三号証のミキサ、乙第一七号証のミキサ及び乙第三一号のミキサが、混合軸に着脱自在に設けられる減速機があるものとして、乙第七号証のCAVEX軸上減速機、甲第二二号証のFALK減速機、甲第二八号証のLINK-BELT減速機がある。本件発明を原告主張の如く解するときは、右各種の公知技術に示される従来技術の範疇に当然含まれる軸上減速機の利用技術の多くが本件特許権の侵害ということになることは明白であるが、そうすると、本来は万人が自由に実施することのできる技術、即ち公知技術ないし自由技術までもが特定の企業ないし個人のために排他的に保護されることになってしまい、特許権者の保護が十分すぎるのに対し、あまりにもパブリック・インタレストの受ける犠牲が大きすぎ、著しく公平を失する。本件発明は、既に述べたとおり反力系のリンク状釣合機構の点にこそ、その特徴を有するものである。
(2) ロ号物件の連結ロッド50は、混合槽1に止着されておらず、単なる連結具にしかすぎない。また、駆動装置は、個々に混合槽の支脚側壁面に設けた固定ブラケットにより支持されており、各々のトルクが固定ブラケット53、54の箇所で個々に支持され、反力系のリンク状釣合機構を構成していないから、構成要件Bを充足しない。
(3) ハ号物件には、ロ号物件の連結ロッド50に相当する連結ロッドが存在しない。また、駆動装置は、個々に混合槽の支脚側壁面に設けた固定ブラケットにより支持されており、各々のトルクが固定ブラケット53、54の箇所で個々に支持され、反力系のリンク状釣合機構を構成していないから、構成要件Bを充足しない。
(4) ロ号物件及びハ号物件の駆動装置の着脱は、固定ブラケット53、54の箇所で、夫々別個の操作により行うものであって、容易に、着脱自在に行い得るものではないから、構成要件Cを充足しない。
(三) ニ号物件
(1) ニ号物件には、連結ロッドが存在せず、一点で支持された構造のものではない。また、駆動装置は、個々に混合槽の支脚に固定されており、反力系のリンク状釣合機構を構成していないから、構成要件Bを充足しない。
(2) ニ号物件の駆動装置の着脱は、右支脚部位において個々別々に行うものであって、容易に、着脱自在に行い得るものではないから、構成要件Cを充足しない。
(四) ト号物件
(1) ト号物件は反力系のリンク状釣合機構を構成していないから、構成要件Bを充足しない。
(2) ト号物件は、ウォーム減速機が混合槽に対して強固にフランジ接合されているから、混合軸に対して着脱自在とはいえない。混合軸から減速機を離脱させるためには、予め前記フランジ接合を解いておかなければならず、その手間は、単なるスリップオン方式だけによる取付けの場合と比較して、格段に相違する。従って、本件発明が目的とするような保守の容易は決して達成されえない。
(3) ト号物件は、混合軸は混合槽に軸承されていない。即ち、本件発明の混合軸はその両端寄り、すなわち減速機取付側とその反対側とで各々、混合槽に設けられた軸受3、3により軸承されているのに対し、ト号物件の混合軸は、その減速機取付側の軸端を、混合槽とは別体の、混合槽にフランジ接合したウォーム減速機の中空出力軸の軸受で支承しており、混合槽の減速機取付側の槽壁には、軸受が設けられていない。これと対向する槽壁すなわち減速機取付側でない方の槽壁には軸受が設けられているが、この混合槽は軸受を両側にではなく片一方だけに設けているにすぎないから、決して混合軸を槽自体で軸承することはできないのである。
(4) 均等の主張に対する反論
(作用効果の非同一)ト号物件は、左右の軸上減速機がいずれも混合槽の槽壁に対し強固にフランジ接合されており、決して混合軸に対して着脱自在とはいえないため、本件発明のように「保守の容易な」混合機を実現するという作用効果を奏することはできない。
(出願公告後の意識的限定)本件特許出願人は、本件特許出願に対する特許異議申立に対処するため、特許請求の範囲第一項の記載を大幅に限定したが、その一つとして、特許出願公告時には全く記載のなかった混合軸への取り付け態様について、「減速機は混合軸1に軸承された混合軸31に対して着脱自在」であること、という新規事項を必須要件とする旨の限定を加えた。この限定は、特許異議申立を受けた後に、該特許異議申立に対する特許異議答弁書の提出と同時にされた補正によるものであるから、その限定を加えることの持つ意味を十分に知ったうえで、敢えて行われたものであり、右限定が特許出願人による特許請求の範囲の意識的限定であることは明白である。然るに、ト号物件は、左右の軸上減速機がいずれも混合槽の槽壁に対し強固にフランジ接合されており、決して混合軸に対して着脱自在とはいえないため、本件発明と均等を論ずる余地はない。
4 争点4(被告らの利益ないし利得の額)について
(一) 原告が、本件専用実施権を取得する前から、甲第五号証に定める内容の実施権を有していたとしても、この種の実施権の侵害に関しては、一般法である民法第七〇九条の適用があるのみであり、明文のない以上特許法第一〇二条を適用することはできない。
(二) 別表記載の各納入先に対する販売の有無並びにイ号ないしニ号及びト号各物件の別は、別表の被告の認否及び積極否認欄記載のとおりであり、販売価格はいずれも否認する。甲第六七号証の一ないし四に記載されている被告北川鉄工所製の強制攪拌式ミキサの価格はいわゆる公称価格であって、実販売価格はこの公称価格を三割程度下回るのが通常である。コンクリートプラントの販売の場合は、価格交渉が個々の単品について行われるのではなく、プラント全体の価格を対象にして一割引きとか二割引きというように、全体でプールして値決めをするというのが一般的である。しかも、同被告の場合、混合機は単品売りされず、すべてコンクリートプラントの販売の際に一部品として包含されている。従って、混合機販売による純利益率は、コンクリートプラント全体の純利益率と同率であると見る以外にこれを算定する基準はない。
しかるところ、同被告におけるコンクリートプラント販売の純利益率は、二・〇一~六・一九パーセントであるから、同被告がイ号ないしニ号及びト号物件の販売により受けた純利益は売上高の五パーセントを上回らないのが通常である。
第四当裁判所の判断
一 構成要件B「混合槽1は自己支持構造であること」の意味(争点1)
1 本件明細書中の発明の詳細な説明(甲二、甲三)によれば、本件発明は、コンクリート・ビチューメン混合物、石灰砂岩などの混合に用いる二軸強制混合機であって、混合槽を備え、該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機に関するものであって、従来の二軸強制混合機の二本の混合軸は連結ホイールによってシンクロナイズされるのであるが、右連結ホイールは混合機の基礎とは別個に設けられた基礎に据え付けられた駆動装置によって駆動されるために、大きい空間及び多くの費用を要すること、並びにスタフィングボックス構造による混合槽のシールは保守が非常に困難であることを従来技術の問題点として把握し(公報二欄三七行目ないし三欄一一行目)、右問題点を解決するために、自己支持形でかつ一体形というコンパクトな構成、即ち、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取付けられて一体形を成す構成を採用し(公報三欄一七ないし二〇行目)、この構成によって、構造が堅牢で、コンパクトに設置することができ、機能が確実(公報六欄七、八行目)な二軸強制混合機を創作したものであると認められる。
従って、特許請求の範囲には、「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ、」と記載されているほかは、駆動装置の内容及びその取付け方法は明記されていないが、本件明細書(特許請求の範囲第一ないし第四項、発明の詳細な説明)及び図面の全記載を総合して考えると、特許請求の範囲にいう「混合槽1は自己支持構造であり」とは、混合槽を二軸強制混合機の基礎構成部材として、モータ及び二個の減速機から成る駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが、混合槽に直接取り付けられ一体形をなしている構造であることを意味するものと解すべきである。
なお、本件特許出願時の明細書(甲二三の二)の発明の詳細な説明中の、「この課題は、本発明に従い、自ら支持し、完成した形を有する混合槽に、足場から独立して、外に対してシールした混合胴体およびその軸承、混合アームを支持する混合軸の上に取付け可能の混合機駆動装置、およびローラー状の排出用滑り弁を、装備することにより、解決することができる。」との記載も、表現に不適切な点があることは否めないけれども、不十分ながら右の趣旨の表現と解することができるから、この点に関する被告らの主張は採用できない。
また、本件明細書中には、「混合槽1は溶接構造で作られ、混合具2、混合槽31、軸承3、駆動装置5(4、9乃至12)、エアシリンダ6及びローラ状の排出用滑り弁35が混合槽1に取り付けられており、かつ混合槽1は完全自己支持構造として独立懸架されている。」(公報三欄二三ないし二八行目)との記載があるが、「完全自己支持構造」という語は、全ての部材を自ら担持している構造という意味に解されるから、前示の如く解することと矛盾しない。また、「懸架装置」を、「ばね、緩衝器およびその他の装置からなる機構、自動車両の上部をその走行装置上に支持する」と説明する、マグローヒル科学技術用語大辞典(乙二六)の記載をもって、本件特許出願人が「独立懸架」の語を用いたのは、「自己支持構造」の語を本質的に衝撃緩和的な駆動装置の支持構造として使用したことを示すものであるとの被告ら主張も採用できない。
2(一) 被告らは、発明の詳細な説明中の「混合物からの反力が混合槽1に対して作用しない」(公報四欄二八、二九行目)という反力相殺の効果を特許請求の範囲第三項記載の発明の効果と認めないと、同発明には何ら特有の効果が存しないことになるから、その効果を同発明の効果と認めなければならないが、その効果を奏するためには、二つの取付台11、12の支持力が混合槽1に一点で支持されていることが必要不可欠であるから、同発明は、「二つの取付台11、12の支持力が混合槽1に一点で支持されていること」を当然の前提にしていると解さなければならない。しかしながら、右要件は、同項記載の発明の記載中にはないから、前項引用部分に含まれていることになるが、同項が引用する同第二項記載の発明の限定要件にも記載されていないから、結局、さらにそれが引用する同第一項の発明(本件発明)そのものの中に包含されていると解さなければならない。従って、本件発明は、「減速機9、10自体の支持力または該減速機9、10を取付けてある取付台11、12の支持力が混合槽1に一点で支持されていること」という要件を内在している、と解さなければならず、結局、本件発明は、反力相殺機構、即ち、少なくとも二台の減速機を混合槽の一点で支持するという技術事項を、第一項中の「自己支持構造」の概念、または「駆動装置」の概念中に包摂させて、必須の構成要件としている、と解すべきである、と主張する。
しかし、右被告ら指摘の記載は、「第5図に示すように、取付台11、12はアイボルト22、24、四個のピン26及び二個のターンバックル23から成る連結ロッドを介して混合槽1の上方部に固定された支持ブラケット25に共に連結される。……」(公報四欄一六ないし二〇行目)との記載に引き続いて、その構成を備えることによる効果を記載したものであることが、その記載の上から明らかであるから、特許請求の範囲第四項の発明の「二つの取付台11、12は連結ロッド22、23、24及び26により混合槽1に固定された支持ブラケット25に共に連結されている。」との構成要件を具備した場合に生ずる作用効果について述べているものであるし、また、被告らが主張するように、反力相殺の効果を特許請求の範囲第三項記載の発明の効果と認めないと、同発明には何ら特有の効果が存しないことになるとしても、そのことからただちに、何ら記載のない「二つの取付台11、12の支持力が混合槽1に一点で支持されていること」という要件を当然の前提にしている、という解釈をしたうえで、特許請求の範囲第四項の発明の構成要件を具備した場合に生ずる場合の作用効果として記載されている事項を同第三項の作用効果であると解さなければならない、とする理由はないから、この点に関する被告ら主張も採用することができない。
(二) 本件特許出願人が特許異議答弁書(乙四の一)に被告ら指摘の記載をしたことは明らかである。ところで、特許法第七〇条は、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基いて定めなければならない」と規定しているが、もとより、特許請求の範囲の記載に用いられる用語は、常に一義的に明白であるとは限らないから、同条は、特許請求の範囲の記載に基礎付けられることなく、技術的範囲を定めてはならないことを明示したにとどまり、その記載が一義的に明白でない場合に、他の資料による解釈を許さない趣旨ではない。そして、特許出願の願書には、特許請求の範囲の他に、「発明の名称」「図面の簡単な説明」「発明の詳細な説明」を記載した明細書及び必要な図面が添付され、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならず、特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならず、右の明細書に記載した事項及び図面の内容は出願公告によって公示される(特許法五一条三項)のであるから、右の解釈にあたり発明の詳細な説明及び図面や当業者に自明の技術的事項を参酌すべきことになる。しかしながら、それとは別に、特許異議答弁書における記載の如く、出願人が出願経過において示した認識や意見は、右のような公示制度はとられておらず、また、そもそも、発明が、特許査定の確定、特許権の設定登録により権利として成り立った以上は、もはや出願人の主観的意図を離れた客観的存在となるのであって、その技術的範囲は客観的に確定すべきであるから、これを当然に参酌すべきであるとすることは相当でない。従って、明細書の記載から多義的な解釈が可能であり、当業者に自明の技術的事項を参酌してもなお技術的範囲を確定できない場合に出願人が出願経過において示した認識や意見を解釈資料としなければならないような場合は別論として、本件における如く、明細書の記載自体から、その技術的範囲を確定できる場合に、特許異議答弁書における出願人の主張を理由として、被告ら主張のように、「自己支持構造」の語を「反力形のリンク状釣合機構を構成する駆動装置を混合槽に直接取付ける構造」を必須の構成要素として包含するものに、出願人が意識的に限定したとして、本件発明の技術的範囲を限定的に解釈することはできない。
もっとも、出願人が異議申立答弁書において特許請求の範囲記載の文言に関して一定の陳述をなし、それが特許庁審査官に受け入れられた結果異議申立が排斥され、特許が査定された場合に、その特許権に基づく侵害訴訟において、特許権者又は専用実施権者などが、右の陳述と矛盾する主張をして侵害を主張することが、信義誠実の原則ないしは禁反言の原則に照らして許されない例外的な場合が生じる可能性があることは否定できないけれども、特許異議答弁書においても、総論部分で、まず、「本願発明の目的ないし作用効果は、駆動部の取付けベースを特に必要とすることなく、駆動部を混合槽に着脱自在に装着保持せしめると共に、混合槽をコンクリート混合用に適するようシールされた軸受を介して混合槽に保持せしめ、又ローラ状の排出用滑り弁を備えることによって、全体として一体構成された自己支持構造の二軸強制混合機を提供することに特徴を有するのであって、これらの結合効果は甲各号証を集めて見ても到底なし得ないものである。そして上述の目的ないし作用効果の理解をさらに容易にするために、以下にこれらを具体的に説明する。」、……「(3) 本願発明の効果」の項で、二軸強制混合機の公知の構造に関して、「この公知の構造は、混合槽と駆動モータを特殊な土台の上に据え付けることを絶対的な必要条件とする。そこで、まず個々の構成要素を個別に据え付ける場所に運ぶ必要がある。そして据え付け場所で、個々の構成要素を土台に固定し、運転可能なように据え付けなければならない。これは非常な時間と費用を食う作業である。駆動モータは混合槽の前面から大幅に突き出ているので、必要とするスペースは更に大きくなる。本発明はこの点から出発して、次のような二軸強制混合機を提供するための課題を解決することを目的としている。-場所をとらない構造であること。-据え付けが容易であること。-低コストで製造できること。-運搬と据え付けには、僅かのスペースしか必要としないこと。この課題の解決は次のような事柄によって特色づけられる。-混合槽が自己支持構造である。-歯車9、10はスリップ・オン・ギヤとして形成され、混合軸31に取りはずし可能なように取り付けられている。-混合軸31は外部に対してシールされた軸承3を介して混合槽1に保持されている。-ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられている。
このため、先行技術において用いられている土台を全く不必要ならしめるという長所が得られる。構造は横形で、その寸法は、運搬時に要求される寸法上の許容範囲内にある。製造現場で一台を完全に組み立てた上で運搬用の車両に載せ、据え付け場所に運ぶことができる。従って運搬費が非常に低廉となり、据え付け後の調整作業が不要となり、据え付けが容易になる。
さらに、コンクリートの混合に用いられる混合機に要求される要件として、下記事項があることは今日周知の事実である。即ち、イ 耐衝撃性があること ロ 騒音が少ないこと ハ 耐磨耗性が混合槽、駆動部及びシール部において充分であること ニ 防塵構造が特に駆動部において必要である。ホ 構造がコンパクトで、修理が簡単で、交換移動が容易であること等である。そして、これらの要件が要求される究極の要因は、コンクリート用原料の物性、特に骨材の磨滅効果及び粒形と粒子径のばらつきである。原料骨材の磨滅効果は一般に周知の事実であり、ここではコンクリートの粒子径の用途別の構成を次に示す。(中略)一般にコンクリート用混合機は上記の用途別に製作されるものではなく、どの用途にも適合することが要求される。そして、特に土木用及び護岸用に関しては、混合機は激しい衝撃荷重を受け、駆動機構にも必然的に激しく変動する反力を受けることになるだけでなく、駆動装置によっては大きな騒音を伴うことは周知の通りである。そこで、本願発明による二軸強制混合機においては、互いに反転する混合具、軸シール部、混合槽下部に設けたライナ部を含み駆動部及び排出部を混合槽に一体化したいわゆる自己保持構造で一体型の二軸強制混合機を提供することにより上述の諸要件をも同時に満足する混合機を開発したのである。」(乙四の一、二頁ないし七頁)との記載をしたうえで、「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置」について説明し、個々の公知資料及び西ドイツ特許裁判所の決定を検討するに際して、被告ら指摘の各記載をなしていることに照らすと、右の二頁ないし七頁において、自己支持構造の意味を、「駆動部の取付けベースを特に必要とすることなく、駆動部を混合槽に着脱自在に装着保持せしめると共に、混合槽をコンクリート混合用に適するようシールされた軸受を介して混合槽に保持せしめ、又ローラ状の排出用滑り弁を備えることによって、全体として一体構成された」構造ないしは、「互いに反転する混合具、軸シール部、混合槽下部に設けたライナ部を含み駆動部及び排出部を混合槽に一体化した」構造であると説明したうえで、合理的に簡単な一体化構造が実現しうる機構の一つについて述べ、本件発明の進歩性を主張するために最良の実施例をもって説明していると見る余地もあって、必ずしも、被告主張の如く、自己支持構造の意味を「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置を混合槽に直接取り付ける構造」に限定する旨の主張をなしていると断定することはできないうえ、特許異議の申立に応じてなされた出願公告決定後の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の補正においても、右構造を必須とすることを示す記載は見いだせず、かつ、本件特許査定を担当した特許庁審査官は、「特許異議申立人の引用した甲第一ないし一一号証にはこの出願の発明の構成要件である下記の点について記載されていない。そしてこの出願の発明はこの点により明細書記載の作用効果を生ずるものと認められる。したがって、この出願の発明は、前記甲第一ないし一一号証に記載されたものと認めることができないばかりでなく、同号証記載のものから容易に発明をすることができたものとも認めることができない。
記
減速機の入力軸と駆動モータの軸とを混合軸に対して直角に配置した二軸強制混合機において、混合槽を自己支持構造とするとともに、駆動装置の減速機を混合槽に軸承された混合軸に着脱自在に設けることにより、装置全体をよりコンパクトな構造としたこと。」との理由で、異議申立は理由がない旨の決定(乙一)をしていること、及び特許請求の範囲第一項の発明(本件発明)の他に、特許請求の範囲第二項ないし第四項の発明が特許されており(甲二、三)、同第四項の発明の特許請求の範囲には被告主張の「反力系のリンク状釣合機構を構成する駆動装置を混合槽に直接取付ける構造」に関する文言が明記されていることに照らして考えると、担当特許庁審査官が被告指摘の特許異議答弁書の記載を受け入れた結果本件発明につき特許査定したものではないと考えられるから、右例外的な場合に該当すると認めることはできず、結局、被告らのこの点に関する主張も採用できない。
(三) 被告は、二軸強制混合機の用途に鑑みると、「自己支持構造」の語は、用途に適合し得るような耐衝撃性が十分保障されるような技術手段を内包するものとして理解しなければ本件発明は「産業上利用できる発明」としての要件を欠如する旨主張しているが、被動軸に直接嵌め込む方式で取り付けられる減速機(軸上減速機)を使用する場合に、減速機が受ける反力を何らかの方法により支持しなければならないことは、本件発明の第一国出願前から当業者にとって自明のことであり、当業者は連結ロッド、トルクアーム、タイロッド等の支持手段を実施していた(甲二二、甲二六、甲二七、甲二八、乙七)のであるから、本件発明に係る二軸強制混合機の混合軸に軸上減速機を設けた場合の減速機が受ける反力(混合槽中の混合物を互いに反対方向に回転する混合具によって混合する際に、混合軸が混合物から反力を受け、したがって、減速機が混合軸から混合軸の回転方向とは反対方向に回転させようとする反力を受ける)についても、公知の反力支持手段を応用することは、当業者の通常の能力の範囲内で行い得るものであった(この点は争いがない)のであるから、右の用途を理由として被告主張の如く限定解釈すべきものとは認められない。
また、被告ら指摘の公知技術及び被告らの主張すべてを参酌しても、本件発明が、被告ら主張の「反力系リンク状釣合機構」の具備を必須の構成要件としているものと認めることはできない。
二 構成要件C「駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられていること」の意味
(争点2)
1 右要件に関しては、特許請求の範囲に同様の文言が記載されているのみで、発明の詳細な説明中にもその具体的内容についての記載はないけれども、本件明細書の全記載を総合して考えると、右文言のとおり、減速機を混合軸に離脱不可能に固定せず、必要に応じ(主として保守の必要から)、混合軸に装着させることも、離脱させることも可能とした構成、一般に汎用されている差し込み式のウォーム歯車減速機のような構成を意味するものと解すべきである。
なお、特許異議答弁書に、「歯車9・10はスリップ・オン・ギヤとして形成され、混合軸31に取りはずし可能なように取り付けられている。」との記載があり(乙四の一、五頁一ないし三行目)、「スリップ・オン」とは、「差込み式」であることを意味し、「スリップ・オン・ギヤ」とは、差し込み式のウォーム歯車減速機であることを意味していること(争いがない。)、及び、当業者である被告北川鉄工所も、被告らが、ロ号物件と同一の構成、ハ号物件と実質的に同一の構成の二軸強制混合機を実施例として含むと主張する実用新案登録願(甲三三)において、差し込み式ウォーム歯車減速機装着の構成を明らかにするのに、実用新案登録請求の範囲において、「混合軸……の混合槽外方への突出部に減速機を着脱自在となして付設する」と記載していることに照らしても、右のように解すべきであることは明らかである。
2 被告らは、「着脱自在」の語には、混合軸との結合に手間を要しないという意味での「着脱の容易性」の概念が含まれる旨主張するが、本件明細書中にもそのように解することを理由付けるような記載はなく、また、前示の甲第三三号証においても、着脱の容易性とはかかわりなく「着脱自在」の語が用いられていることに照らしても、到底採用できず、従って、駆動装置の着脱の容易性も構成要件に含まれる旨の主張も採用できない。
三 被告各物件が構成要件B及びC(ト号物件についてはB、C及びD)を具備するか否かにつて(争点3)
1 イ号物件が、前認定の意味での構成要件B及びCを具備していることは明らかである。
2 ロ号物件及びハ号物件も、前認定の意味での構成要件B及びCを具備していることは明らかである。
被告らは、ロ号物件及びハ号物件がいわゆる「自由技術」に属するから、本件発明の技術的範囲には属しない旨主張するが、一般抽象的に被告ら主張の如き自由技術の主張が許容される事例がありうるとして、被告ら指摘の公知技術、証拠及び被告ら主張を参酌しても、ロ号物件及びハ号物件がいわゆる自由技術に属し、本件発明の技術的範囲に属しないと認めることはできない(被告ら指摘のロ号物件及びハ号物件を実施例として記載した実用新案登録出願が被告ら主張の理由で拒絶されたとしても、同出願は本件発明の第一国出願日より長年月を経た後にされたものであるから、右拒絶を理由にロ号物件及びハ号物件がいわゆる自由技術に属すると認め得ないことは、いうまでもない。)。
3 ニ号物件も、前認定の意味での構成要件B及びCを具備していると認められる。
4 なお、被告らは、本件特許についてなされた特許無効の審決が、東京高等裁判所の判決(平成元年(行ケ)第一八九号審決取消請求事件)により取り消され、この判決は確定したが、同判決は、「本件第一発明は、駆動装置、すなわち『モータ及び二個の減速機』が、いずれも、混合槽に直接取り付けられ、混合槽と一体形をなしている構成を要旨とするものである」と認定した結果、審決取消の結論に至ったものであるところ、イ号ないしニ号各物件は、いずれもその駆動モータは、減速機の上方に設けた、混合槽とは無関係な「モータ台」の上にこれと一体に載置固着されており、混合槽に直接取り付けられていないから、右認定の構成に該当しない旨主張する。しかしながら、右判決は、「従来の二軸強制混合機における二個の混合軸は連結ホイールによりシンクロナイズされ、この連結ホイールは混合機の基礎とは別の所に設けた基礎上に据付けられた別個の駆動装置によって駆動される。この駆動方法においては大きい空間を要すること及び多くの費用を要するという欠点がある。」(公報第三欄二ないし八行目)、「駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取付けられて一体形をなす」(公報第三欄一七ないし一九行目)、「駆動装置5は一個又は二個のモータ4、混合軸31上に取付された二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12よりなり」(公報第三欄二八ないし三一行目)などの発明の詳細な説明全体の趣旨に徴して、右の如く認定することができるとしたものであるから、右判決にいう、「混合槽に直接取り付けられ」の意味も、モータが何らの取付け手段も介さずに直接混合槽に取り付けられる取付態様に限定するものではなく、本件発明の実施例として記載がある取付台11、12の如き取付手段を当然に前提にするものであることは明らかであるから、右主張は理由がない。
5 ト号物件も、前認定の意味での構成要件Bを具備していることは明らかである。
しかし、ト号物件においては、ウォーム歯車減速機のフランジが、混合槽1にボルトにより固着された減速機取付フランジにボルト及びナットで固着され、他方、混合軸31の右減速機取り付け側は、右混合槽にフランジで固着された減速機9、10の出力軸の軸受に嵌合されて混合槽1に保持されており、構成要件Cの「……混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられている」構成及び構成要件Dの「混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されている」構成を具備していない。
原告は、右相異に関して、軸上減速機のフランジによる取付及び反力支持方法と連結ロッドによる取付及び反力支持方法の作用効果は同一であり、かつ全く同一の技術思想の上に成り立っており、その間の置換可能性及び置換容易(自明)性は明らかであり、かつ本件発明の非特徴部分の置換であるので、右の相違点は、本件発明に対して、単なる設計上の徴差、均等ないし迂回と評価されるべきである旨主張する。しかし、前記のとおり、ト号物件は構成要件Dの構成を全く欠いている上、ウォーム歯車減速機の中空出力軸の軸受で混合軸を支承しており、右減速機が混合槽に対して強固にフランジ接合されているのであって、右減速機が混合軸に対して着脱自在に設けられている(構成要件C)とはいえず、混合軸から減速機を離脱させるためには、混合軸の軸受の機能をも果している減速機のフランジ接合を予じめ解除しておかなければならず、その手間は、単なる差し込み式のウォーム歯車減速機の取付けの場合と比較して相当増大すると認められるから、本件発明の目的とする「……コンパクトな構造によって、より新しく簡単な混合機を提供し、費用……を節約し保守の必要が少なく、総合的な見地から経済的な二軸強制混合機を製作」との記載(公報三欄一一ないし一五行目)に鑑みると、右差異をもって、原告主張のように、単なる設計上の徴差、均等ないし迂回とみることはできないといわざるを得ない。また、本件発明は、それを構成する各個別の技術はすべて本件発明の第一国出願当時既に公知の技術であって(争いがない)、それら各公知の技術を本件発明のとおりに組合せて構成したところに最小限度の進歩性が認められて特許されたものであるから、この点に鑑みても、右のとおり構成要件を欠くト号物件について、単なる設計上の徴差、均等ないし迂回と認めることはできない。
6 従って、イ号ないしニ号は本件発明の技術的範囲に属するが、ト号は技術的範囲に属さないというべきである。
7 被告北川鉄工所は、現在はイ号ないしニ号各物件の製造販売をしていない旨主張するが、同被告は、昭和五四年一一月ころから、昭和五七年一月ころまでの間、イ号ないしニ号物件を製造販売したこと(争いがない。)、右各物件につき原告と紛争が生じていた昭和五七年三月ころにト号物件の製造販売をはじめたこと(甲三七、甲四一、甲四三、甲五五ないし甲五八、弁論の全趣旨)、及び本件訴訟が提起された後に右ト号物件の製造販売も中止して新製品の製造販売を開始したこと(弁論の全趣旨)に照らすと、イ号ないしニ号各物件については紛争を生じたために一時的に製造及び販売を中止しているもので、将来、製造、販売及び販売のための展示をするおそれがあると認められる。
被告北川鉄工所が現在イ号ないしニ号物件及びその半製品を所有していると認めるに足りる証拠はない。
四 被告らが原告に対し支払わなければならない金額(争点4)
1 被告北川鉄工所
(一) イ号ないしニ号物件の販売台数等
被告北川鉄工所は、昭和五四年一一月一四日以降、昭和五七年一月までの間、別表記載番号1ないし39及び同41ないし75の納入先に、納入年月欄記載のころ(番号1ないし5は、昭和五四年一一月一四日以降)、型式欄記載の型式のイ号ないしニ号物件(その別は、各物件の別欄記載のとおり)を販売した(納入先及び各物件の別は争いがなく、販売年月日及び型式は、甲六五、甲六六及び弁論の全趣旨により認定)。
原告は、同被告がト号物件にあたると主張する別表記載番号76ないし78、80ないし82、84ないし114の各物件について、ト号物件はハ号物件の反力支持機構に加えてウォーム歯車減速機を混合槽の側壁にフランジ接合する手段を付加したものにすぎず、かつ、右の改造は極めて容易であるから、販売、納入時においてイ号物件又はハ号物件であったものがその後改造された疑いがある旨主張するが、それらが、販売、納入時においてイ号物件又はハ号物件であったことを認めるに足りる証拠はない。また、別表記載番号40の昭和五六年三月納入の八木生コンへのW一五〇〇型の二軸強制混合機の納入については、同被告作成のダブルミキサ(二軸)納入実績表(甲六五)にはそれに添う記載があるが、同実績表には、同年一〇月にも同社に同型機の納入をした旨の記載があるのに対して、同被告作成のバッチャープラント&関連機械納入実績表(甲六六)には、同社への同年中のプラント販売の実績としては、同型機を含むプラントと認められるBPA一五〇〇型のプラント一件の納入が記載されているにすぎないことに照らすと、誤りである可能性があるのでただちに採用することはできず、その他右事実を認めるに足りる証拠はない。また、別表記載番号83の成羽川生コン株式会社への販売物件については、これが、イ号ないしニ号物件にあたることを認めるに足りる証拠はない。結局、被告北川鉄工所の販売台数は、別表記載番号1ないし39、同41ないし75の合計七四台(内訳は、イ号物件三台、ロ号物件一台、ハ号物件六八台及びニ号物件二台)と認められる。
(二) 被告北川鉄工所は、右七四台を製造販売するについて過失があった(甲三七、乙五、弁論の全趣旨)。
(三) 同被告が得た利益金額
(1) 販売価格
原告は、イ号ないしニ号の各物件の販売価格を、別表販売価格欄記載のとおり主張し、甲第六七号証の一ないし四にはこれに添う記載があり、証人真殿浩昌も、原告は、二軸強制混合機は、建値どおりの価格で販売している旨供述する。しかしながら、同号証に記載されたイ号ないしニ号各物件の販売価格はいわゆる公称販売価格であり、同被告は、実際の販売に際しては、右各物件を単品で販売するということはなく、ほとんどすべてそれらを一構成部材とするバッチャープラント(生コンクリートを練り上げるためのプラント)の販売の際にそれに包含して販売しているが、常に公称販売価格よりも値引きして販売しており、その際の値引きも、通常は、各構成部材毎ではなくプラント全体の価格を一括して行っている(甲七三、甲七四、乙四〇、乙四一の二、乙四二の二、証人与五沢昭彦)から、イ号ないしニ号物件もコンクリートプラント全体の値引き率と同様に値引きをして販売されたものと認めるのが合理的である。
そこで、検討するに、イ号ないしニ号の、W-一〇〇〇型、W-一〇〇〇D型(いずれも混練容量一立方メートル)、W-一五〇〇型(混練容量一・五立方メートル)、W-二五〇〇型(混練容量二・五立方メートル)及びW-三〇〇〇型(混練容量三立方メートル)の公称販売価格は、別表に記載のとおりである(甲六七の一ないし三)。なお、W-二〇〇〇型及びW-二〇〇〇D型(いずれも混練容量二立方メートル)の公称販売価格は甲第六七号証の一ないし三に記載がないが、昭和五五年度におけるW-一五〇〇型の公称販売価格は、原告の同サイズの本件特許発明の実施品である二軸強制混合機の公称販売価格と比較すると約一〇パーセント高く、W-二五〇〇型の公称販売価格は原告の同サイズの二軸強制混合機の公称販売価格と比較すると約六・九パーセント高いこと(甲六七の一)に照らすと、その中間のサイズである右W-二〇〇〇型の公称販売価格も原告の同サイズの二軸強制混合機の公称販売価格である一一五〇万円を下らないと推認され、昭和五六年度及び五七年度におけるW-二〇〇〇型及びW-二〇〇〇D型の公称販売価格も、同様に、W-一五〇〇型の公称販売価格が、原告の同サイズの二軸強制混合機の公称販売価格より約四パーセント高く、W-二五〇〇型の公称販売価格は、原告の同サイズの二軸強制混合機の公称販売価格と比較すると約一・七パーセント高いこと(甲六七の二、三)に照らすと、右W-二〇〇〇型及びW-二〇〇〇D型の公称販売価格も原告の同サイズの二軸強制混合機の公称販売価格である一二七一万円を下らないと推認される。
次に、実際の販売価格を検討するに、<1>同被告の建機事業部営業課長である証人与五沢昭彦の、バッチャープラント業界では見積価格に対して二〇パーセント前後の値引きをし、公称価格と比較すると三〇パーセント近くの値引をするのが実情である旨の証言に、<2>別表記載番号59の昭和五六年八月の株式会社三和日立生コンへのハ号物件のW-二〇〇〇型の販売に際しては、公称販売価格一二七一万円のところを、従前からあるプラントの大規模改造工事であるために周辺の部材との調整が困難であり、かつ自社プラントの改造であるため他社と競合関係に立たないことから、二軸強制混合機を前記公称販売価格よりも高く一四〇〇万円と見積り、プラント全体の価格を六八八八万五〇〇〇円と見積ったうえで、うちセメント輸送機改造工事(見積額二八八万円)を除いた生コンクリートプラント改造工事を五三〇〇万円で行っている(甲六九、乙四〇、証人与五沢昭彦、弁論の全趣旨)から、プラント全体の値引率(約一九・七〇三〇五三%)に応じて、二軸強制混合機を一一二四万一五七二円で販売したとみるべきで、この実販売価格の公称販売価格一二七一万円に対する比率は、約八八・四パーセントであること、<3>別表記載番号74の昭和五七年一月の高月生コン株式会社へのニ号物件のW-一五〇〇型の販売に際しては、公称販売価格八五〇万円のところを、混合機をシュート付で七九六万六〇〇〇円と見積り、生コンクリートプラント全体の価格を五四四五万四〇〇〇円と見積ったうえで、四四〇〇万円で販売している(乙四二の一、二、証人与五沢昭彦)から、プラント全体の値引率(約一九・一九七八五六%)に応じて、二軸強制混合機を六四三万六六九八円で販売したとみるべきで、この実販売価格の公称販売価格八五〇万円に対する比率は、約七五・七パーセントであること、<4>別表記載番号62の昭和五六年九月のコヤマ工業株式会社へのハ号物件のW-二五〇〇型の販売に際しては、公称販売価格一六〇〇万円のところを、一三〇〇万円と見積っていたこと、に弁論の全趣旨を総合して考慮すると、イ号ないしニ号各物件の実際の販売価格は、平均的には公称販売価格の七五パーセントと認めるのが相当である。
従って、イ号ないしニ号各物件の販売価格平均は、次のとおりと認めるべきである。番号1ないし31及び33(昭和五四年一一月一四日ないし昭和五五年一二月の販売分)
W-一〇〇〇型及びW-一〇〇〇D型(一九台) 四八七万五〇〇〇円
W-一五〇〇型(六台) 六一五万〇〇〇〇円
W-二〇〇〇型(一台) 八六二万五〇〇〇円
W-二五〇〇型(二台) 一一六二万五〇〇〇円
W-三〇〇〇型(四台) 一二七五万〇〇〇〇円
番号32、34ないし39及び41ないし75(昭和五六年一月ないし昭和五七年一月の販売分)
W-一〇〇〇型及びW-一〇〇〇D型(一七台) 五〇二万五〇〇〇円
W-一五〇〇型(一四台) 六三七万五〇〇〇円
W-二〇〇〇型及びW-二〇〇〇D型(五台) 九五三万二五〇〇円
W-二五〇〇型(二台) 一二〇〇万〇〇〇〇円
W-三〇〇〇型(四台) 一三一二万五〇〇〇円
(2) 純利益金額
後掲の各証拠に弁論の全趣旨を総合して検討すると、純利益の額は、以下に認定する金額を下らないものと推認するのが相当である。
<1>番号1ないし31及び33(昭和五四年一一月一四日ないし昭和五五年一二月の販売分)
W-一〇〇〇型及びW-一〇〇〇D型(一九台)
販売価格 四八七万五〇〇〇円
材料費 一八四万九五九九円
(甲六八、甲七〇の一、二、甲七二、証人与五沢昭彦。なお、昭和五四年も昭和五五年と同額と推認)
労務費 八三万〇二一三円
(乙四六記載の被告北川鉄工所の昭和五五年九月二一日から昭和五六年九月二〇日までの製品売上高中に占める製造原価の比率八四・一八パーセントに、製造原価中に占める労務費の比率二〇・二三パーセントを乗じて得た一七・〇三パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額。なお、昭和五五年九月二〇日以前も同率であると推認。小数点以下四捨五入)
経費(外注加工費、減価償却費、電力費及びその他の合計) 六七万三二三八円
(右の八四・一八パーセントに、製造原価中に占める経費の比率一六・四〇パーセントを乗じて得た一三・八一パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額。なお、昭和五五年九月二〇日以前も同率であると推認。小数点以下四捨五入)。
販売費及び一般管理費 四六万九四六三円
(右被告北川鉄工所の同期間中の製品売上高中に占める販売費及び一般管理費九・六三パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額。なお、昭和五五年九月二〇日以前も同率であると推認)
総経費合計 三八二万二五一三円
純利益の額 一〇五万二四八七円
W-一五〇〇型(六台)(証拠関係はW-一〇〇〇型に同じ)
販売価格 六一五万〇〇〇〇円
材料費 二七七万二三〇八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 二四八万八九〇五円
(右一七・〇三パーセント、一三・八一パーセント及び九・六三パーセントの和である四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 五二六万一二一三円
純利益の額 八八万八七八七円
W-二〇〇〇型(一台)(証拠関係はW-一〇〇〇型に同じ)
販売価格 八六二万五〇〇〇円
材料費 三一六万六二四八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 三四九万〇五三八円
(W-一五〇〇型に同じく、四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 六六五万六七八六円
純利益の額 一九六万八二一四円
W-二五〇〇型(二台)(証拠関係はW-一〇〇〇型に同じ)
販売価格 一一六二万五〇〇〇円
材料費 三九二万九六二八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 四七〇万四六三八円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 八六三万四二六六円
純利益の額 二九九万〇七三四円
W-三〇〇〇型(四台)(証拠関係はW-一〇〇〇型に同じ)
販売価格 一二七五万〇〇〇〇円
材料費 四二四万二四二〇円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 五一五万九九二五円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 九四〇万二三四五円
純利益の額 三三四万七六五五円
<2>番号32、34ないし39及び41ないし62(昭和五六年一月ないし同年九月の販売分)(証拠関係は<1>と同じ)
W-一〇〇〇型及びW-一〇〇〇D型(一一台)
販売価格 五〇二万五〇〇〇円
材料費(<1>と同じ) 一八四万九五九九円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 二〇三万三六一八円
(<1>で得た四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 三八八万三二一七円
純利益の額 一一四万一七八三円
W-一五〇〇型(八台)
販売価格 六三七万五〇〇〇円
材料費(<1>と同じ) 二七七万二三〇八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 二五七万九九六三円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 五三五万二二七一円
純利益の額 一〇二万二七二九円
W-二〇〇〇型及びW-二〇〇〇D型(五台)
販売価格 九五三万二五〇〇円
材料費(<1>と同じ) 三一六万六二四八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 三八五万七八〇三円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 七〇二万四〇五一円
純利益の額 二五〇万八四四九円
W-二五〇〇型(一台)
販売価格 一二〇〇万〇〇〇〇円
材料費(<1>と同じ) 三九二万九六二八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 四八五万六四〇〇円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 八七八万六〇二八円
純利益の額 三二一万三九七二円
W-三〇〇〇型(四台)
販売価格 一三一二万五〇〇〇円
材料費(<1>と同じ) 四二四万二四二〇円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 五三一万一六八八円
(右四〇・四七パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 九五五万四一〇八円
純利益の額 三五七万〇八九二円
<3>番号63ないし75(昭和五六年一〇月ないし昭和五七年一月の販売分)
W-一〇〇〇型(六台)
販売価格 五〇二万五〇〇〇円
材料費(<1>と同じ) 一八四万九五九九円
労務費 九九万三四四三円
(乙四六記載の被告北川鉄工所の昭和五六年九月二一日から昭和五七年九月二〇日までの製品売上高中に占める製造原価の比率八八・〇八パーセントに、製造原価中に占める労務費の比率二二・四四パーセントを乗じて得た一九・七七パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額)
経費 七八万七九二〇円
(右の八八・〇八パーセントに、製造原価中に占める経費の比率一七・八〇パーセントを乗じて得た一五・六八パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額)
販売費及び一般管理費 四九万七九七八円
(右被告北川鉄工所の同期間中の製品売上高中に占める販売費及び一般管理費九・九一パーセントと同率と推認し、これを右販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 四一二万八九四〇円
純利益の額 八九万六〇六〇円
W-一五〇〇型(六台)
販売価格 六三七万五〇〇〇円
材料費 二七七万二三〇八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 二八九万一七〇〇円
(右一九・七七パーセント、一五・六八パーセント及び九・九一パーセントの和である四五・三六パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 五六六万四〇〇八円
純利益の額 七一万〇九九二円
W-二五〇〇型(一台)
販売価格 一二〇〇万〇〇〇〇円
材料費 三九二万九六二八円
労務費、経費、販売費及び一般管理費 五四四万三二〇〇円
(右四五・三六パーセントを販売価格に乗じて得た額)
総経費合計 九三七万二八二八円
純利益の額 二六二万七一七二円
<4>以上の純利益の額に台数を乗じて合計すると、総額は、一億〇九七二万〇九九一円となる。
(3) 推認される損害金額-原告が特許権者に支払うべき実施料の控除
原告は、ベーハーエスとの間の本件実施契約により、本件特許権の完全独占的通常実施権及び専用実施権設定を含むライセンス料として、本件特許発明を実施した二軸強制混合機であるBHSミキサの正味販売価格を対象として、契約年当たり五〇〇〇万円の合計額に対して四パーセント、同一契約年内の五〇〇〇万円の合計額以上の販売額に対しては三パーセントのライセンス料を支払うことを約している(甲四、甲五)。また、原告の本件特許発明を実施した二軸強制混合機の正味販売価格は年間五〇〇〇万円を越えている(弁論の全趣旨)。従って、原告は、被告北川鉄工所による侵害行為がなく、自ら本件特許発明を実施した二軸強制混合機を販売した場合にも、これにより得た利益の中から、訴外ベーハーエスに実施料を支払う義務があるのであるから、この実施料を控除した残額を自己の利益として取得することができるにすぎない。そうすると、侵害者の得た利益を基にして権利者の損害の額と推認する場合にも、実施料相当額を控除すべきである。
そこで、実施料相当額を検討すると、まず、被告北川鉄工所のイ号ないしニ号各物件の販売価格の総額は、前記の販売価格に販売台数を乗じて合計すると五億一一二三万七五〇〇円となり、相当実施料率は右事実から三パーセントと認められるから、実施料相当額は一五三三万七一二五円となる。
以上により、同被告の得た前記利益額一億〇九七二万〇九九一円からベーハーエスに対し支払うべき実施料相当額一五三三万七一二五円を控除した九四三八万三八六六円が、原告の損害額と推認される。同被告の右各侵害行為は本件特許権及び本件専用実施権設定登録前であるが、原告は、いわゆる仮保護の権利について完全独占的な実施権者であり、同被告の右各侵害行為当時は原告のみが本件特許発明にいう自己支持構造の二軸強制混合機の製造販売権を独占し、他にこれを製造販売していたのは同被告のみという関係にあった(証人真殿)から、同被告の得た右利益をもって、同被告の行為と相当因果関係にある損害と推認するのが相当である。
従って、同被告は原告に対し右損害金九四三八万三八六六円を支払う義務がある。
2 その余の被告ら
(一) 本件特許出願公告後昭和五七年一二月二四日(本件専用実施権の設定登録日)前に被告北川鉄工所から、被告水戸コンクリート商事はハ号物件一台を、被告田子浦第一生コンクリートはイ号物件一台を、被告二日市生コンはハ号物件一台を、それぞれ購入し、業として使用して、同日以降本件専用実施権を侵害しており、被告らには過失が存したことが推定される。従って、原告は特許法一〇二条二項に基づき同被告らに対しいわゆる実施料相当額を原告が受けた損害額として賠償請求することができるところ、実施料相当額は当該物件の価格の四パーセントが相当と認められるから(甲四、甲五、弁論の全趣旨)、同被告らの賠償すべき金額は次のとおりとなる(なお、物件の価格は前記理由により、公称販売価格の七五パーセントと認定)。しかし、被告東亜生コンクリートが使用しているト号物件は本件発明の技術的範囲に属することは認められないから、同被告に対する請求は理由がない。
(1) 被告水戸コンクリート商事
一二七五万円×〇・〇四=五一万円
(2) 被告田子浦第一生コンクリート
六一五万円×〇・〇四=二四万六〇〇〇円
(3) 被告二日市生コン
一一六二万五〇〇〇円×〇・〇四=四六万五〇〇〇円
なお、原告に対する右各被告からの支払債務は、被告北川鉄工所の前記支払債務といわゆる不真正連帯の関係にある。
(二) 不当利得を理由とする予備的請求についても、同被告らが、右金額を超える利得を得たことを認めるに足りる証拠はない。
五 信用回復措置の請求について
原告は被告北川鉄工所に対し、別紙広告目録記載の新聞に同目録記載の要件の広告を掲載することを請求するが、本件全証拠によっても、原告が、同被告の行為によって、信用回復措置を必要とする程、業務上の信用を害された事実を認めることはできないから、右請求は理由がない。
(裁判官 庵前重和 長井浩一 辻川靖夫)
別表 省略
第一物件目録
一 名称
ダブルミキサー
二 図面の説明
第一図は駆動装置側の正面図、第二図は左側面図、第三図は平面図、第四図は背面図、第五図は排出用滑り弁の縦断側面図、第六図は第五図の×-×断面を示した図、第七図は混合槽の部分拡大断面図、第八図は駆動装置の固定部分の詳細正面図、第九図(a)、(b)はそれぞれ第八図の固定部分をA、Bの方向から見た平面図である。
三 符号の説明
1 混合槽 2 混合具
3 軸受 4 モータ
6 排出用滑り弁駆動シリンダ
9、10 ウォーム歯車減速機
11、12 取付台 27 弾性カップリング
31 混合軸 35 排出用滑り弁
36、37 滑り弁軸 38 承台
47 ベアリング
50 連結ロッド(位置調整用)
51、52 突起ブラケット(固定ブラケット) 53、54 連結ロッド
55 ターンバックル 56 フォークエンド
58 ブラケット
四 構造の説明
1 別紙図面に示すように、コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であり、混合槽1を備え、該混合槽1中に設けられた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、ウォーム歯車減速機9、10と二台のモータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、ウォーム歯車減速機9、10の入力軸と二台のモータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁を有する。
ウォーム歯車減速機9、10の出力軸(中空軸)は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられる。
2 右の二軸強制混合機の駆動装置は、取付位置調整可能とした二台のモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリング27により接続される。
3 前記取付台11、12の支持力の作用線は、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にある。
4 二個のウォーム歯車減速機9、10の上部は連結ロッド50及びフォークエンド56を介して互いに連結されるとともに、二個のウォーム歯車減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52は連結ロッド53、54及びフォークエンド56を介して、混合槽1に設けられたブラケット58に熔接固定されたターンバックル55にそれぞれ連結される。
第1図~第9図
第二物件目録
一 名称
ダブルミキサー
二 図面の説明
第一図は駆動装置側の正面図、第二図は左側図面、第三図は平面図、第四図は背面図、第五図は排出用滑り弁の縦断側面図、第六図は第五図の×-×断面を示した図、第七図は混合槽の部分拡大断面図、第八図は駆動装置の固定部分の詳細正面図、第九図(a)、(b)はそれぞれ第八図の固定部分をA、Bの方向から見た平面図である。
三 符号の説明
1 混合槽 2 混合具
3 軸受 4 モータ
6 排出用滑り弁駆動シリンダ
9、10 ウォーム歯車減速機
11、12 取付台 27 弾性カップリング
31 混合軸 35 排出用滑り弁
36、37 滑り弁軸 38 承台
47 ベアリング
50 連結ロッド(位置調整用)
51、52 突起ブラケット 53、54 ブラケット
56 フォークエンド 57 フォークエンド付ボルト
四 構造の説明
1 別紙図面に示すように、コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であり、混合槽1を備え、該混合槽1中に設けられた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、ウォーム歯車減速機9、10と二台のモータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、ウォーム歯車減速機9、10の入力軸と二台のモータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁を有する。
ウォーム歯車減速機9、10の出力軸(中空軸)は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられる。
2 右の二軸強制混合機の駆動装置は、取付位置調整可能とした二台のモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリング27により接続される。
3 前記取付台11、12の支持力の作用線は、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にある。
4 二個のウォーム歯車減速機9、10の上部は連結ロッド50及びフォークエンド56を介して互いに連結されるとともに、二個のウォーム歯車減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52はフォークエンド付ボルト57を介して混合槽1に設けられたブラケット53、54にそれぞれ連結される。
第1図~第9図
第三物件目録
一 名称
ダブルミキサー
二 図面の説明
第一図は駆動装置側の正面図、第二図は左側面図、第三図は平面図、第四図は背面図、第五図は排出用滑り弁の縦断側面図、第六図は第五図の×-×断面を示した図、第七図は混合槽の部分拡大断面図、第八図は駆動装置の固定部分の詳細正面図、第九図は第八図の固定部分をAの方向から見た平面図である。
三 符号の説明
1 混合槽 2 混合具
3 軸受 4 モータ
6 排出用滑り弁駆動シリンダ
9、10 ウォーム歯車減速機
11、12 取付台 27 弾性カップリング
31 混合軸 35 排出用滑り弁
36、37 滑り弁軸 38 承台
47 ベアリング
51、52 突起ブラケット 53、54 ブラケット
57 フォークエンド付ボルト
四 構造の説明
1 別紙図面に示すように、コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であり、混合槽1を備え、該混合槽1中に設けられた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、ウォーム歯車減速機9、10と二台のモータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、ウォーム歯車減速機9、10の入力軸と二台のモータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁を有する。
ウォーム歯車減速機9、10の出力軸(中空軸)は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられる。
2 右の二軸強制混合機の駆動装置は、取付位置調整可能とした二台のモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリング27により接続される。
3 前記取付台11、12の支持力の作用線は、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にある。
4 二個のウォーム歯車減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52はフォークエンド付ボルト57を介して混合槽1に設けられたブラケット53、54にそれぞれ連結される。
第1図~第8図
第四物件目録
一 名称
ダブルミキサー
二 図面の説明
第一図は駆動装置側の正面図、第二図は左側面図、第三図は平面図、第四図は背面図、第五図は排出用滑り弁の縦断側面図、第六図は第五図の×-×断面を示した図、第七図は混合槽の部分拡大断面図、第八図は駆動装置の固定部分の詳細正面図、第九図は同右側面図である。
三 符号の説明
1 混合槽 2 混合具
3 軸受 4 モータ
6 排出用滑り弁駆動シリンダ
9、10 ウォーム歯車減速機
11、12 取付台 27 弾性カップリング
31 混合軸 35 排出用滑り弁
36、37 滑り弁軸 38 承台
47 ベアリング 51 ブラケット
52 減速機固定ブラケット
四 構造の説明
1 別紙図面に示すように、コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であり、混合槽1を備え、該混合槽1中に設けられた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、ウォーム歯車減速機9、10と二台のモータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、ウォーム歯車減速機9、10の入力軸と二台のモータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁を有する。
ウォーム歯車減速機9、10の出力軸(中空軸)は混合槽1に軸承された混合軸31に差し込み式に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられる。
2 右の二軸強制混合機の駆動装置は、取付位置調整可能とした二台のモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリングにより接続される。
3 前記取付台11、12の支持力の作用線は、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にある。
4 二個のウォーム歯車減速機9、10は、混合槽1に取付けられたブラケット51に設けられた減速機固定ブラケット52に、それぞれボルトを介して取付けられる。
第1図~第9図
第五物件目録
一 名称
ダブルミキサー
二 図面の説明
第一図は駆動装置側の正面図、第二図は左側面図、第三図は平面図、第四図は背面図、第五図は排出用滑り弁の縦断側面図、第六図は第五図の×-×断面を示した図、第七図は混合槽の部分拡大断面図、第八図は駆動装置の固定部分の詳細正面図、第九図は第八図の固定部分をAの方向から見た平面図、第一〇図は減速機と混合槽との連結部分の各部品を示した図である。
三 符号の説明
1 混合槽 2 混合具
3 軸受 4 モータ
6 排出用滑り弁駆動シリンダ
9、10 ウォーム歯車減速機
11、12 取付台 27 弾性カップリング
31 混合軸 35 排出用滑り弁
36、37 滑り弁軸 38 承台
47 ベアリング
51、52 突起ブラケット 53、54 ブラケット
57 フォークエンド付ボルト
61 軸穴穿設板 62 減速機取付フランジ
63 グリースシール 64 ネジ付きテーパピン
65 六角ボルト 66 六角ボルト
67 六角ナット 68 重ね形歯付き座金
69 舌付き座金 71 外鍔状のフランジ
四 構造の説明
1 別紙図面に示すように、コンクリート、ビチューメン混合物及び石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であり、混合槽1を備え、該混合槽1中に設けられた複数の混合具2を有する二本の混合軸31は、水平に配置され、ウォーム歯車減速機9、10と二台のモータ4とにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、ウォーム歯車減速機9、10の入力軸と二台のモータ4の軸とは混合軸31に対して直角に配置され、該混合具2の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽1の下方部分に排出用滑り弁を有する。
ウォーム歯車減速機9、10は混合槽1に六角ボルト65により固着された減速機取付フランジ62に六角ボルト66及び六角ナット67により固着され、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3及びウォーム歯車減速機9、10の出力軸(中空軸)の軸受(図示せず)を介して混合槽1に保持されており(混合軸31は右ウォーム歯車減速機9、10の出力軸に差し込み式に設けられている。)、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられる。
2 右の二軸強制混合機の駆動装置は、取付位置調整可能とした二台のモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリング27により接続される。
3 前記取付台11、12の支持力の作用線は、二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にある。
4 二個のウォーム歯車減速機9、10の下部に設けられた突起ブラケット51、52はフオークエンド付ボルト57を介して混合槽1に設けられたブラケット53、54にそれぞれ連結される。
5 減速機9と混合槽1とは次のように連結される(減速機10と混合槽1との連結もこれと同様である)。
(1) 混合槽1の軸穴穿設板61に対し、減速機取付フランジ62が、複数個の六角ボルト65と舌付き座金69とで取付けられる。
(2) 右減速機取付フランジ62には、グリースシール63とネジ付きテーパピン64とが取付けられる。
(3) 他方、ウォーム減速機9の混合槽1への取付端面外周には、予め外鍔状のフランジ71が一体的に形成されている。
(4) 右ウォーム減速機9は、右減速機取付フランジ62に、前記外鍔状のフランジ71を重ね合わせるように密着させた後、複数個の六角ボルト66を前記減速機取付フランジ62の裏側から挿通し、該六角ボルト66に、外鍔状のフランジ71の側から重ね形歯付き座金68を嵌合し、最後に六角ナット67を螺合緊締する。
第1図~第10図
広告目録
一 掲載すべき新聞
1 日本経済新聞
2 日刊工業新聞
3 日本工業新聞
4 セメント新聞
5 コンクリート工業新聞
二 掲載すべき回数
各新聞につき各一回
三 広告及び活字の大きさ
1 広告の大きさ
縦六・八センチメートル(二段抜き)、横八・〇センチメートル
2 活字の大きさ
(一) 見出し ゴチック二倍活字
(二) 原告及び被告株式会社北川鉄工所の表示 二倍活字
(三) その他の部分 一倍活字
四 広告文案
左記のとおり
記
広告
当社が昭和五四年一〇月以降二軸強制混合機「ダブルミキサー」を製造販売したことにより、ベーハーエス・バイエリッシェ・ベルク・ヒュッテン・ウント・ザルチヴェルケ・アクチェンゲゼルシャフト社が有する特許権(特許第一〇八八七六三号二軸強制混合機)に係る貴社の専用実施権を侵害し、これがため貴社の信用を害し、多大の迷惑損害をおかけしましたことをここに謝罪します。
平成 年 月 日
広島県府中市元町七七番地の一
株式会社北川鉄工所
代表取締役 北川一也
大阪市北区同心一丁目五番一三号
光洋機械産業株式会社
特許公報
特許出願公告 昭五四-三七三三五
公告 昭和五四年(一九七九)一一月一四日
発明の数 四
二軸強制混合機
特願 昭四七-五八四九四
出願 昭四七(一九七二)六月七日
公開 昭四八-三〇一四九
昭四八(一九七三)四月二〇日
優先権主張 一九七一年八月二〇日西ドイツ(DE)P二一四一九〇八・九
発明者 ルドルフ・マルティネック
ドイツ連邦共和国八九四五レガオ・ハオプトシュトラーセ八二
同 ヨハネス・エルテル
ドイツ連邦共和国八九七二ゾントーフェン・ハンスーベツ・クラー・シュトラーセ一八
同 エルヴィン・ハット
ドイツ連邦共和国八九七二ゾントーフェン・ハンスーベツクラー・シュトラーセ一〇
同 クラオス・エルレンシュピール
ドイツ連邦共和国八九七二ゾントーフェン・ファルケンシュトラーセ二二
出願人 バイエリッシェ・ベルク・ヒュッテン・ウントザルツヴェルケ・アクチェンゲゼルシャフト
ドイツ連邦共和国八ミュンヘン・ニュンヘンブルガーシュトラーセ一二〇
復代理人 弁理士 鎌田文二
引用文献
実公 昭三六-二九九七五
特許請求の範囲
1 混合槽の中に設けた互いに接続して駆動される複数の混合具と混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機において、混合槽1は自己支持構造であり、さらに駆動装置5は混合槽1に軸承された混合軸31に取付可能で、混合軸31は外部に対してシールされ、軸受3を介して混合槽1に保持され、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられていることを特徴とする二軸強制混合機。
2 前記混合機の駆動装置5はモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、前記ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリングにより接続することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の二軸強制混合機。
3 前記駆動装置5の取付台11、12の支持力の作用線が二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にあることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の二軸強制混合機。
4 二つの取付台11、12は連結ロッド22、23、24及び26により混合槽1に固定された支持ブラケット25に共に連結されていることを特徴とする特許請求の範囲第3項記載の二軸強制混合機。
発明の詳細な説明
本発明は混合槽の中に設けた互いに接続して駆動される複数の混合具を有し、この混合具は混合アーム及びショベルから成り、混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機に関するものである。
この二軸強制混合機は混合すべき物質を上方より挿入する混合機であって、混合すべき物質は混合槽中に水平で、かつ互いに反対方向に回転する混合具により垂直及び水平方向に混合され、螺旋状に動かされる。この作業過程により短時間で優れた均等性が得られる。混合物の取出しはローラー状の排出用滑り弁を介して重力によって行なわれる。従って取出しの際に分離現象は起らない。
この二軸強制混合機は一般にあらゆる種類のコンクリート、熱いまたは冷たいビチューメン混合物、及び石灰質砂岩等の混合用に使用される。従来の二軸強制混合機における二個の混合軸は連結ホイールによりシンクロナイズされ、この連結ホイールは混合機の基礎とは別の所に設けた基礎上に据付けられた別個の駆動装置によって駆動される。この駆動方法においては大きい空間を要すること及び多くの費用を要するという欠点がある。さらにスタフィングボックス構造による混合槽のシールは保守が非常に困難である。
本発明の目的は上述の様な欠点を除去し、自己支持形でかつ一体形というコンパクトな構造によって、より新しく簡単な混合機を提供し、費用及び空間を節約し保守の必要が少なく、総合的な見地からより経済的な二軸強制混合機を製作することにある。即ち、混合槽は自己支持構造であり、駆動装置、混合軸及びそのシール装置、混合具及びローラ状の排出用滑り弁のいずれもが混合槽に直接取付けられて一体形を成すことにより前述の欠点を解消することができる。
以下に本発明の詳細を添付図面に基づいて説明する。
第1図、第2図および第3図に示すように混合槽1は溶接構造で作られ、混合具2、混合槽31、軸承3、駆動装置5(4、9乃至12)、エアシリンダ6及びローラ状の排出用滑り弁35が混合槽1に取り付けられており、かつ混合槽1は完全自己支持構造として独立懸架されている。駆動装置5は一個又は二個のモータ4、混合軸31上に取付された二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12よりなり、二個のウォーム歯車減速機9、10は中間に配置した弾性的カップリング27により接続され、混合具2の同期回転を得る。ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽1の下方部分に滑り弁軸36、37及び軸受47を介して承台38に取付られており、エアシリンダ6により駆動される。混合軸31は、潤滑油室により外部に対してシールされた軸承3を介して混合槽1に保持されている。この軸シール装置は例えば二つの分離された互いに隣接する潤滑油室から成り、潤滑油室は夫々滑動リングを有し、一方の潤滑油室は迷路状としかつ混合槽の内部に通じ、他方の潤滑油室は混合槽外部に通じており、又各潤滑油室には外部から注油できるようにそれぞれ別個の注油ニップを設けた構造とし、混合物が洩出するのを迷路状潤滑油室内の油により防止し、滑動リングの摩耗を阻止するというようなものが使用される。
第4図に示すようにモータ4は取付台11に取付られボルト13、14により取付位置を調整可能としている。モータ4からウォーム歯車減速機9、10への動力の伝達はリング15、Vプーリ16、Vベルト17及びVプーリ18よりなるVベルト駆動装置によって行なう。この駆動方法においてカップリングフランジ19、カップリング用リング20及びカップリング本体21を有する弾性的カップリングは混合軸31の回転の同期化の役をなし、モータ動力をウォーム歯車減速機9、10にそれぞれ伝達する。
第5図に示すように、取付台11、12はアイボルト22、24、四個のピン26及び二個のターンバックル23から成る連結ロッドを介して混合槽1の上方部に固定された支持ブラケット25に共に連結される。二個の混合軸31に分配される動力が理論的に略等しく、かつ混合軸31の中心を結ぶ線a~bに対してピン26の四つの中心点を結ぶ直線が略平行であれば混合槽中の混合物を互いに反対方向に回転する混合具2によって混合する際に混合物から混合軸31が受ける反力は向きが互いに反対で大きさが相等しい為支持ブラケット25の点で相殺され、従って混合物からの反力が混合槽1に対して作用しない為混合槽1に無理な力が作用せず保護される。
第4図及び第5図に示す駆動装置は主として中庸の大きさの混合機に採用され、第6図及び第7図の駆動装置は主として小さい混合機に、また第8図及び第9図の駆動装置は主として大きい混合機に応用される。これらの駆動装置は原理的には同じであり、相違するのはたゞモーターの個数及びVプーリの位置のみにある。
第3図及び第10図に示すように、混合具2は混合アーム28、対立片29、ボルト30、混合ショベル32、ボルト33及びアングル34より成る。対立片29及びアーム28のハブの形を円めること、又ボルト30を沈めて配置することにより混合物の付着を避けることができる。またアングル34を備えることによりボルト33の混合物による摩耗を避けることができる。
第1図、第13図及び第14図に示すように排出装置は混合槽1の下方部分に取付けられ、ローラ状の排出用滑り弁35、滑り弁軸36、37ボールベアリング47を有する承台38及びキー39より成る。排出用滑り弁35は一片または多片よりなる湾曲した摩耗保護板41を有する。この摩耗保護板41は二列に配置し溶接したボルト42により滑り弁35に固定する。摩耗保護板41の取換えは並行に配置したボルト42により滑り弁35を下方に旋回し容易に行うことが出来る。さらに混合槽1の排出部にシール縁40およびシール板44がボルト43及び45により取付られ容易に取換え出来る。
なお、このシール板44は排出用滑り弁35のローラ直径に対して略接線の方向に多数取付可能で、このシール板44を設けることによってこの取付部に凹部を生じることなく、混合物の移動を滑らかにすることができる。
ローラ状の排出用滑り弁の作用効果は、第一に排出すべき物質はエアシリンダ6によりローラ状の排出用滑り弁35を回転させることにより発生する空間を通って排出するが、そのとき排出用滑り弁35に取付けた摩耗保護板41と混合槽1の排出部に取付けたシール縁40及びシール板44とが常に一定の僅かな隙間を保つため滑り弁35を閉じるとき摩耗保護板41とシール縁40及びシール板44との隙間に混合物が噛み込むことがほとんど無く、円滑に操作できること、第二に第15図に示すように混合の際混合ショベル32と混合槽1の内壁との隙間cに混合物が噛み込み混合槽1の内壁が摩耗するのであるが、ローラ状の滑り弁35の位置するところは略三角形の空間dができるため、摩耗保護板41の摩耗が少ないこと、第三に第15図に示すように滑り弁35の上面は円みを持っているため混合槽1の右側から左側へまたその逆の場合も混合物が滑らかに移動するため極めて良い混合ができることである。
以上の如く本発明の二軸強制混合機は従来の二軸強制混合機に比べ、構造が堅牢であり、コンパクトに設置することができ、機能が確実であって、実施において発生するあらゆる要求に応じることができる。
図面の簡単な説明
第1図は本発明による二軸強制混合機の正面図、第2図は第1図の強制混合機の側面図、第3図は第1図による強制混合機の平面図、第4図は強制混合機のいま一つの実施例の正面図、第5図は支持ブラケットの側面図、第6図は二軸強制混合機のいま一つの実施例を示す正面図、第7図は、支持ブラケットの実施形態の側面図、第8図は本発明による二軸強制混合機のいま一つの実施例を示す正面図、第9図は支持ブラケットのいま一つの実施例を示す正面図、第10図は混合アームの拡大側面図、第11図は第10図の線XI-XIによる断面図、第12図は第10図の混合アームの平面図、第13図は排出用滑り弁の縦断側面図、第14図は第13図の線XIV-XIVによる横断面図、第15図は混合槽の部分拡大側面図である。
第1図~第15図
昭和四七年特許願第五八四九四号(特公昭五四-三七三三五号、〔JPC七二B三二一・二〕、昭五四・一一・一四発行の特許公報四(三)-七九〔六四七〕号掲載)については特許法第六四条の規定による補正があったので下記のとおり掲載する。
特許第一〇八八七六三号
記
一 「特許請求の範囲」の項を「1 特にコンクリート、ビチューメン混合物および石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、混合槽を備え、該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機において、混合槽1は自己支持構造であり、駆動装置5の減速機9、10は混合槽1に軸承された混合軸31に着脱自在に設けられ、混合軸31は潤滑油室により外部に対してシールされた軸受3を介して混合槽1に保持されており、ローラ状の排出用滑り弁35は混合槽の下部に滑り弁軸36、37及びベアリング47を介して承台38に取付けられていることを特徴とする二軸強制混合機。
2 前記混合機の駆動装置5は取付位置調整可能としたモータ4、混合軸31に取付けられた二個のウォーム歯車減速機9、10及び二個の取付台11、12より成り、前記ウォーム歯車減速機9、10は中間にある弾性カップリングにより接続することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の二軸強制混合機。
3 前記駆動装置5の取付台11、12の支持力の作用線が二本の混合軸31の中心を結ぶ線a~bと略平行にあることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の二軸強制混合機。
4 二つの取付台11、12は連結ロッド22、23、24及び26により混合槽1に固定された支持ブラケット25に共に連結されていることを特徴とする特許請求の範囲第3項記載の二軸強制混合機。」と補正する。
二 第二欄二四~二八行「本発明は~関するものである。」を「本発明は、特にコンクリート、ビチューメン混合物および石灰砂岩の混合に用いられる二軸強制混合機であって、混合槽を備え、該混合槽中に設けた複数の混合具を有する二本の混合軸は、水平に配置され、減速機と少なくとも一台の駆動モータとにより互いに反対の回転方向に同期駆動され、減速機の入力軸と駆動モータの軸とは混合軸に対して直角に配置され、該混合具の周縁部の描く円は互いに交わり、さらに該混合槽の下方部分に排出用滑り弁を有する二軸強制混合機に関する。」と補正する。